ものすごく辛いことがあると、私は「母の子だから乗り越えられる」と唱えます。
忍耐強い母を思うと、強くなれるのです。
先日、和歌山県でステージショーの仕事があり、その時も唱えました。必ずできると。

ステージ本番の前夜、世界で一番大切な母が亡くなりました。69歳でした。

私は出張先でしたが、前日まで病室で近くにいることができ、当日は妹が繋いでくれたテレビ電話で最期のその瞬間まで「ありがとう」と「大好き」を言い続けることができました。特別な時間でした。

母の病気が発覚したのが今から15年前。
元々仲の良かった母娘でしたが、そこから妹と私は毎日母を幸せにすることを全力で企画してきました。
とっても控えめで、弱音を吐かず、贅沢をせず、自分以外のためだけに生きていた母。
鳥が庭のみかんを食べ終えてしまうとみかんを買ってきて枝に刺すし、新幹線の指定席も困っている人に譲るし、自分は節約して寄付をしたり家族のために貯めていたし…
旅行やプレゼントで心から喜んでもらうというのは本当に難しかったです。

そんな中でも絵本作家のいりやまさとしさんとコラボレーションさせていただいた「ねんドルキャットひとミィのまほうレストラン」(学研)でねんどのねずみの衣装を担当してもらったことは未だに何度も言うほど喜んでくれていたんですよ。

私は母のような人の、良さが伝わる世界になってほしいと願っています。
今年のテーマを「愛」とし、「世の中は強い人を基準に作られているということを、とても感じた一年でした。言えない人のSOSに気付けるように、言わない人の悲しみに気付けるように。」と書いたのも、その思いです。


もっともっともっと一緒にいたかったけれど、「こうしておけば良かった」という後悔はありません。
私はこんなにも、失うことが深く悲しい、と思える母を持ったことを、心から誇りに思っています。

昨日無事に葬儀を終えました。
たくさんのお花や弔電、駆けつけてくれた仲間たちに心を支えていただきました。本当にありがとうございました。
親孝行にいつも協力してくれた事務所にも感謝しています。

インタビューでもよく母の話をしていましたし、ねんど教室の材料作りや販売しているシュシュやヘアクリップを制作してもらったり、個展でも母の絵手紙を展示したり、イベントにも頻繁に遊びに来てもらっていたので、応援してくださっている方の中に私の母の印象がある方もいらっしゃいますよね。

皆様心配しないでください。
私、母の子ですから。


岡田ひとみ