あなたの指とボクの口唇22 | ビールと猫'sと嵐さんと(注・BL)

ビールと猫'sと嵐さんと(注・BL)

嵐が大好物
J担 翔潤loverですが、櫻葉&大宮何でもアリです(妄想、腐ってます)

人の勧誘目的、宣伝目的、男性は入室されないでください。
絶対に申請認定しませんから。




 

 

 かか……。


 とと……。


 ねぇね……。


 どうしてるんだろう。

 

 すぐに離されてしまったけれど、われにはしっかり顔が焼き付いている。


 やさしそうなとと、たおやかなかか、元気いっぱいでよく動き回るねぇね。


 もっと一緒にいたかった。


 普通の子供みたいに野原を駈け、ご飯だと呼ぶかかの声に家にもどる。


 そんな普通なことがわれには許されなかった。


 誰も恨む気はない。


 嫁御様の代わりだったけど、ただのお世話役……嫁御様が誕生するまでの餌だったけど。


 嫁御様が現れるまでは。幸せも不幸せも知らずに生きていた。


 それがわれに与えられた使命だったから。


 なぜか生まれ落ちたそのときからわかっていた。


 だから言葉なんか必要なかった。


 誰も話しかける人もいなかったし、われも話しかける人と会ったこともなかった。


 岩屋にこもって日々を暮らしていたとき、仲良くなった動物達はすぐに凍りついてしまった。


 それがなぜなのかはわからなかったけど、今ではわかる。


 あのときわれは【あれ】以外の物に気を取られてはいけなかったんだ。


 代わりでも、嫁御だったから。


 そしてあの日突然のように村中に響き渡った産声。

 盛大な祭囃子。


 祝福の中で、われは居場所を失った。


 岩屋はわれにはどこからも入れず、ただ、足元に光る鱗のようなもの。


 われの使命が終わった印。


 日常が日常でなくなった印。


 でも、今はそれでよかったんだと思う。


 そうでなければしょうさまと会うことは出来なかった。


 この運命が待っていたことをあのときのわれに教えてあげたい。


 お前はとても素敵な人と巡り会うことが出来るんだぞ、と。


 子犬のワルツはとても素敵な音なんだぞ、と。


 それ以上にしょうさまは【あれ】とは全く違う【われのかみさま】なんだから。