この人は目が見えないんだろう。探るような口ぶり、暴力な口調、でもこの人は決して暴力を振るわなかった。
そして目が見えているようには僕の宝物を扱わず、不思議なものなのだと認識して扱った。
われが逃げていた人たちはこれを奪い金と代えようとした。
そこには血が纏わりついていた。こんな小僧から高価な存在をかぎとり、ずたぼろにして目的物だけ手に入れ、あとは知らないというのは、よくある話だし、現にわれをターゲットとして年上の力のある男たちはそうだった。
でもこの人は暴力は振るわない。それよりは小刻みに振るえる、その震えを感じる。人は、振るえるときに無意識のことがある。この人もきっとそうだと心が通じてくる。
だからわれは鱗を渡した。
われのところにきて、常にわれを守ってくれた。時に刃になり時に優しく守ってくれる存在。
彼にその鱗を渡した。
きっとこれを通して解り会える。
それは絶対的な道標なのだから。