嘘だ。
嘘に決まっている。
ツヨシさんに迷惑がかかるからお茶でも持って行かなきゃだめだ。
そう自分に言い聞かせても、奥から出ることができず、しゃがみこんでガタガタ震えていた。
「あ、すみません。
この先のビルに用があったんですが突然の大粒の雨に降られてしまって、申し訳ないと思ったのですが寄らせていただきました。
焼き物の個展ですか?少し見てもよろしいですか?
今から行くお得意先の社長がこういうものを集めていて、あ、僕にはよくわからないんですがそんな僕でもいいなってものがあったら喜んでもらえるかなって。
営利目的ですが、それでも、こんな僕でもすてきだなって思うものがあるかもしれないので」
「いいのがありましたら」
すいっとあの人を残してツヨシさんはボクの方に来ると、あいつが帰るまで出なくていい。
そういってボクにココアを入れ、コーヒーを2つ入れた。
「ごめんなさい」
声になったかわからないけどそう言うと、ボクの頭をクシャっとして奥から出て行った。