「じゅーん、雑巾がけおわっ」
たぞ、なんて続かなかった。
目に入ってきたのは体制を崩して身体を中投げ出す姿だった。
間に合え、間に合ってくれ!
ただひたすらに潤の落下地点に走った。
でも、身体の力を抜く潤は空気にさえ逆らわず落下していく。
俺が受け止められるなんてそんなこと思ってない。ただ、少しでも、下敷きなればいいとそれだけを思って走った。
ダンっという音ともに来る衝撃は、つまる息と共に俺がほっとするに足りる衝撃だった。
痛む身体のことなど無視し、潤を見る。幸い俺の上に頭が乗ったのか、打ち所がよかったのか気を失っているだけのように見えた。
「じゅ、ん、じゅ……ん、だれかっ!」
動かそうとしても身体が動かない。けれど、声は出る。
誰か、誰か来てくれ!
潤が落ちたんだ。あんな高いところから落ちて無事なはずがない。
頭を打っていないなんて、俺の願いだ。本当のところはわからないんだから、病院へ彼を連れていってくれよ!早く!早く連れていってくれ!
何でこんなときに限ってだれも来ない!もう、雅紀が来てもいいはずだ!ニノでも誰でもいいから来てくれ!
どのくらい、そうしていたんだろう。
少しずつ指が、手が動き、身体がようやく起こせた頃、
「ごめんごめん、寝坊しちゃって~」とのんきな雅紀の声が聞こえた。
「雅紀!雅紀、早く!早く救急車を!」
そこまでが精一杯だった。
潤を抱き締めたまま、俺は……気を失った。
どこかで、
「翔ちゃん!潤!」
という、雅紀の叫び声を聞いたがした。