(たすけてっ!たすけてっ!ボクを追いかけてこないで。
何にも持ってないよ!たすけてっ!)
「潤!」
えっ!
翔君の声に驚いて、自分が眠っちゃってたことに気がついた。
ソファーの上でうたた寝していたらしい。
周りには心配そうな智にぃとまぁちゃん、和也が慌てて差し出したのは体温計。
「あ、ボク……」
「ナニ言ってんのかはわかんなかったけど、汗びっちょりだ。
熱、計んなよ」
和也がくれた体温計を脇に挟みながら、チラリと翔くんを見る。
何であんな夢を見たのか何となくわかってるボク。
あの時大人たちはボクの体をおもちゃにして遊んでたんだ。
気持ち悪かったり痛かったこと。今でも身体の奥底に残っている。
でも、もうそんな目には会うことはないんだ、ここにいればそんな目には……。
なのにボクは大きくなるにつれて翔くんの横を離れなくなった。
何でかはわからない。
智にぃだってまぁくんだって、和也だって大好きなんだ。
でも、くっついていたいのは翔くんで、いつも翔くんのことを目で追ってる。
ボク、どうしたんだろう。
ピピピ
ボクの思考を破るように体温計の電子音が鳴った。
「見せて!」
和也が奪っていくのをボーッと見てたら、
「ほら、7℃だよ!」
「じゃあ、食事まで寝てたた方がいいな」
って翔くんまで。
「やだ、ここにいる」
みんながここにいればボクのナマエがわかんなくなることなんて無い。
ナマエがなかったときに戻ることもないんだから、どこにも行きたくないの。
「しょーくん、ごはん当番?」
「はは、ねぁな」
「……翔くんいててくれれば、寝れる気がするの」
「あっ!潤の甘えん坊が出た」
和也に笑われたけど、でも、
「いいよ。行こうか、ベッド」
「うん、だっこ」
そばに来てくれた翔くんの首にすがりついた。
いい香り、ほんとに眠くなってきたよぉ。