恋が原動力になるなんて、恥ずかしいけど。ボクの原動力は翔くんだ。
目をつぶってすべてを諦めて受け入れて。なんて卑屈なやつだったろう。
でも、今は違う。
翔くんだけじゃない。ボクにはみんながいる。
だから、過去をなかったものにはできないけど、これからを歩んでいきたい。
そして、いつかたきざわ君にも笑える自分になりたいんだ。
「潤!」
「松本!」
「こら、なにやってんだ!」
いつのまにかボクの周りには人が溢れて。
軽口とかそんなものが飛び交う世界は心地良い。
旬が、
『今のお前となら仕事を続けていきたい』
そう言ってくれたことがうれしかった。
みんなは待っててくれたのかな?そんなことを思うのは烏滸がましいかな。
「翔くん」
「ん?」
翔くんの心地好い腕の中で聞いてみたかったことを話し出した。
「ボクを泥沼から救ってくれたのは翔くんだと思ってた。でも、カズやリーダー、旬、ううん、マネージャーさんやみんなが手を伸ばしてくれた。嬉しかった。
でも、今だから聞きたい。ボクにそんな価値はあったのかを。ボクにはそうは思えないんだよ。切り捨ててくれれば良かったのにどうして?」
「どうしてだと思う?」
翔くんは笑いながらボクの髪を撫でる。
その手にうっとりと目を閉じたボクは、
「わかんないから聞いてるのに」
甘えた声を出してしまって鼻をつままれる。
「バカ」
「あっ!」
くるんと体が回されて仰向けになったボクの目線には翔くんのきれいな顔。
ボクの好きな人。
「お前を大切に思わないやつなんかいない。その瞳で誰もを虜にしてさ。手を伸ばすなんて当たり前のこと。惑ってるなら手を引いてやりたいとみんなが思っていた。そのきっかけを待ってたんだよ」
「……」
「なんか言えよ」
「しょく、んも?」
「ずっとね、大切に思ってたから。だから今、お前が心から笑ってる姿がうれしい」
翔くん……ボクは……。
「みんなに愛されてるって思っていても良いのかな?周りに恵まれてるって思っても?」
「そうだな。感謝を忘れんな。それだけで良いんだ」
翔さんの腕の中はあたたかい。
ボクと翔くんの間には一ミリの隙間もない。
「翔くん……」
「ん?」
「大好き」
「愛してるよ、ずっと一緒にいよう」
うん、翔さんとずっと一緒にいたい……ここに愛があるんだ。
こんなことを言ったら変かもしれないけど
ありがとう、たきざわ君。ボクは貴方が決して嫌いではありません。眩しかったんです。だから拒絶できなかった。それはボクの甘えからでした。
でもボクは、貴方から卒業します。
ボクの前には翔くんが……。愛する人が……。
Day's ……fin