「解けよ!何考えてんだよ!」
はだけたシャツから胸を見せつける。その目は蔑みの目だった。
「だめ、あんたはそこで見てなさい。誰に何を言われたか知らないけど、」
そう言って男のズボンを下ろしそこを咥える。
「大丈夫、あの子はあんたの子よ」
「嘘だ!あの鑑定結果は100%俺の子じゃないって!」
「夢でも見たんじゃないの?ねえしゃちょ?もっと激しくつ いて。こいつには出来ないくらい感じさせて。満足出来ないの、あんなぬるいセック ス」
笑いながら男に抱かれ乱れる女。
俺はあんたと結婚するんじゃなかったのか?あんたは俺を愛していると言ったんじゃなかったか?
「嘘つけよ、俺の子供か専務の子かわかんないくせに。お前本当にセック ス好きだなあ。旦那の前でイカせてやるよ」
激しく揺さぶりながらも俺の子供とは言わない男。
隠していたナイフで何とか縄を切り、思わず向けた切っ先を納めてそこを飛び出した。
こんなやつらを殺しても仕方がない。こんなやつらに俺の人生をこれ以上台無しにされたくない。
どこをどう歩いたのかもわからず、部屋に辿り着いたとき、足はガクガクと崩れ落ちた。
「パパ、おかえりなさい」
そう呼んで飛び付いてくるこの子を俺はどうしたらいいのか。
「ただいま。でもすぐに出掛けなきゃいけないんだ」
不満そうな子供を残し家を出た俺は実家に向い、自分の部屋に閉じ籠った。
「和、警察の人が来てるんだけど」
1週間ぶりに他人の声を聞いたのは警察官の声。
でも、その内容は……、
「二宮和也さんですね、任意同行をお願いします」
天地がひっくり返るような内容。
「え?」
「あなたに殺人の嫌疑がかかっています」
「な、何を!」
「あなたの婚約者が見ていました。あなたが殺人を犯すのを」
「まさかっ!」
俺じゃない、俺のわけがない。あの女か!
「署までご同行願います」
でも、わかっていても否定はできない。
あの女が犯人だとしても。
あのかわいい子の顔がちらつく。我が子だったらどんなに良かったかと思ったあの子の顔が……苦しむのは見たくない……。