「な、なんで!」
翔さんに連れられて車に乗った相葉くんはすごく狼狽えている。そりゃそうだよね、ボクが乗ってるんだもん。
「雅紀、少し話がしたい。
マネ君、俺んちにつけてくれる?帰りはタクシーで俺経費でいいからさ」
きっと何か察してるのか、それとも誰かに何かを言われているのか何も言わないまま翔さんのマンション(?)の駐車場につけたマネージャーさんは、明日のスケジュールを告げると一礼して帰っていった。
何食わぬ顔の翔さん。
狼狽えている相葉くん。
覚めた目で見るしかないボク。
けど、相葉くんに感じる気持ちは少しずつ変わってきているんだ。
もしかしたら……かわいそうだと思ってる自分を終わらせられる?
たきざわくんの影から出ることができるかな?
そしたら、本当に好きな人に……好きだと言ってもいいのかな?
無理。
無理じゃない。何もしないで流されてるボクを終わりにすればいいだけだ。
まずは相葉くんと話そう。
『まー君』って呼んでいた頃の素直な気持ちで相葉くんを見るんだ。
手を伸ばして相葉くんの服に触れた。
ビクッと首をすくめた相葉くんの目は怯えてる。
こんなにも小さな人だったっけ?
こんなにも悲しそうな瞳をした人だったっけ?
ボクのせいだね。ボクが責め続けたせいだね。
「【まー君】」
「じゅ……っ!」
「【まー君】が許せないって、地獄に落ちればいいって思ってた。でも、【まー君】は笑えなくなってるって翔さんが教えてくれた。
話がしたい。何であんなことをしたのかも、何で笑えなくなったのかも、全部話をしよ。ボクも笑い方忘れちゃったんだ。
【まー君】のこと知ることができたら笑い方を思い出せるかもしれない。
【まー君】とだったら思い出せるんじゃないかな」
翔さんが、ボクと相葉くんの肩を叩いた。
『踏み出せ』
そう聞こえたのは間違いじゃないよね。
続