なに?なんなの?もうほっといてよ。
たきざわくんはボクと別れればそれで終わるかもしれない。自分の気持ちの持っていきようだって自分で決められる。
でも、それはやる方の側の論理だ。やられてた方はそうは行かない。
過去も、今も、この先も、ボクにはレッテルが貼られてしまった。
【アシヲヒラケヨ マンゾクサセテヤルゼ タキザワニハナイショナ】
気が狂いそうだよ。
大好きな翔さんに抱かれたら何か変わるかと思ったけど何も変わらない。それどころか苦しくなっただけ。
助けてという気持ちがなくなったってことは変わったか。自分が動いてもどうしようもないことは誰も助けてくれないことって学んだだけラッキーだったかな。
「お前つまんねぇヤツだな」
増えてきたドラマや映画の仕事。人前で恥ずかしくないように稽古したり、その監督さんの作品を手当たり次第に見漁ったり。オレなりに勉強して行った現場で突然降ってきた言葉に茫然とする。
ボクは少しずつ形が作られて行くものを見るのが好きだ。
だからあの日も時間の許すまで共演の役者さんの演技を観てた。
「え?」
振り返ったら、
「お疲れ様デ~ス。あ、マツケン飯喰って帰ろ~」
ちょっと背中を丸めた後ろ姿。ニヤリと笑って振り返ったのは【旬】だった。
何事にも真剣。でも、羽目を外すときも納得ができるまで停まらない。
ばっか向いてるオレはさもつまんない男に見えてんだろうな。
「次、どこ?」
「チーフがお呼びです。そちらに向かいます」
「あのさ、オレの演技なんだけどさ」
車に戻って次の予定聞いてそれで会話は終了。なんにも話すことなんかない。
でも、今日はあんなことを言われたせいか、つい言わなくてもいいことを言ってしまった。