「まさか、気がついてなかったの?」
そんなはず、ないでしょ。
「タッキー?」
「うん。
あの頃の翔さんは何かというと滝沢くんに張り合ってた。
大人になってビジネスライクな付き合いはしていたけど、やっぱり滝沢くんを排除してた」
翔さんの顔色が変わる。
でも、オレは言わなきゃいけない。
始めるためには壊さなきゃ。
そうだよね、カズ?
「翔さんが乱暴に俺を抱くようになった切っ掛け覚えてる?
辛気臭い顔してんなってあなたに抱かれた後のオレに吐き捨てるように言うようになったの。
オレ最近思い出したんだ。
滝沢くんに抱き締められたのを翔さんに見られた…その後だったよね」
明らかに動揺してオレから視線を外す翔さん。
やっぱり覚えてるんじゃん。
あの日、別の番組の収録で来ていた滝沢くんに、収録が終わったら楽屋に来て欲しいと言われた。
翔さんと一緒に暮らしだした頃だと思う。
Jr.の頃から一目置かれていた滝沢くんはオレにとっては手の届かない存在だったから、そう言われてとても驚いた。
だから、たぶんそわそわしていたんだと思う。
翔さんに落ち着きがないのはどうしてだと言われ、それを笑って誤魔化したとき、スタジオの空気がざわついた。
滝沢くんが覗いているのを観覧の人が見つけ騒ぎ出したんだ。
それに気がついた滝沢くんが慌てて外に出ていったのを見た翔さんからは鋭い舌打ち。
イライラしてるのが見てとれた。
これで今日楽屋に呼ばれてるなんて言えば更に機嫌が悪くなるのは目に見えてる。
家に帰って責められるのは嫌だ。
そう思ったオレは誰にも内緒で滝沢くんの楽屋に行った。
今思えばそれがいけなかったんだ。
翔さんにちゃんと理由を言って行けば、オレは気付くことはなかった。
翔さんの中に巣食う暗闇に…。
続