「あ、しょ…さ」
「悪い、泣くつもりじゃなかったんだ、悪い」
翔さんの涙…目が釘付けになり、そっとその涙に触れる。
ビクッとした翔さんの弱々しい瞳に面して、どういう感情が生まれているのか理解できないまま抱きついてその胸に頭を預けた。
「潤…」
「泣かないで…翔さんはいつも自信に満ちていて、オレ達の前を歩いてるはずでしょ?
オレなんかにそんな弱いとこ見せなかったじゃん。
そんな、苦しそうな顔しないで。
お願い、お願い翔さん」
翔さんの腕がオレの身体を包む。
震えや、怯えは何もなかった。
ただ、愛しいと愛しているとそう思っていたあの頃のように身体を預けた。
「ありがとう」
エレベーターが階に着いたことを知らせる音がして、翔さんがオレの身体をそっと押す。
「降りよう」
「うん」
身体を離されて翔さんの温もりが消える。
でも手が伸ばされた。
すがるようにその手に自分の右手を重ねれば、ぐっと強く握られて…、
「お前の気持ち次第だけれど、やり直せるかな、俺達」
そっと手の甲に口唇があてられる。
『いいですか?やり直すんじゃありません。
始めるんですよ。
やり直すのであればまた同じ結果になります』
カズの声がフィードバックした。
そうだ…やり直すんじゃないんだ…。
でも、その為にはオレはやらなきゃいけないことがある。
始めるために…。
どんなに辛くても…。
続く