翔を男に抱かせる。
契約の履行として、翔を抱かせるのは必要な事だ。
男が男を抱く。
夫のある女が男に抱かれる。
よくあることかもしれないが、世間体的には良い響きではない。
そこをついたのが父のやり方。
取引をするのであれば弱味を晒せと。
父がまだ生きていた頃、その役目は俺だった。
抱くのも抱かれるのも同じ事。
今、それを指示するのは俺だ。
女を抱くのは岡田。
抱かれるのは翔。
「翔」
「はい」
それだけで翔は理解する。
能面のような顔をして相手に従って行く。
成長したあの子はその色香を漂わせ、オレの元に来た時と変わらないふっくりした口唇は妖しいほどの朱に染まった。
オレの下で更に朱に染まる口唇は、
『じゅん、さ、じゅんさ、まぁ』
甘い言葉を紡ぐ。
あの身体を他の人間に抱かせるのは本当は・・・。
本家に戻る時に三宅に言われた。
『あの子に欲 望を求 めて引き取っていらっしゃった。
最初はすぐに飽きるかと思いましたが、どんどんのめり込んでいらっしゃる。
ここでならいくらでも睦言を囁いても構いませんでした。
けれど、ここを出る時が参りました。
お覚悟を、潤様。
あれは道具だとお思いなさい。
そう思えないのなら、翔をここに閉じ込めてしまいなさい』
「岡田」
燻った気持ちをどうにかするためには誰かに抱かれるしかない。
本家に三宅はいない。
「今日も彼は誰かのもとで 乱れて?
なら、貴方もまた乱 れますか?」
嗤いながら俺を穿 つ岡田を離せないのは、翔を 求められないから?
雄として?それとも?
岡田に抱かれながら思い出すのは、三宅の事。
俺を抱いたあいつ。
そして、俺が、この先も翔以外で抱く男はあいつだけ。
「う、ぁっ!」
「俺に抱かれながら何を思う?」
ぐっとあ てられたそれがゆっくりと粘 膜を割る。
「んぁ、ああぅ!」
中ほどでとめられ苦しい。
「おか、だ・・・」
求めてもそのまま動 かず、じわじわと高 まっていく欲 望。
「おか、だぁ!」
「ふふ、可愛らしい。
まだまだ、お若くていらっしゃって、手練手管も本当に可愛らしい。
今頃、翔はどんな痴 態をしているのか想像してみたか?
潤様のように、白い肌 を晒 して。
こんな風に男をの み込んで。
その口 唇から出るのは喘 ぎ声だけだ」
「ああっ、も、もぉ」
「翔と潤様は同じだ。
同じ時に同じように男に 抱 かれているんだよ」
言葉で 犯 され、ゆっくりと快 楽を生むやり方で、俺の身体 は跳 ねていく。
「ふぅああっ!あっー!ん、ん、ん!」
その時、岡田が言ったことが上手く理解できなくて、首を横に振った。
「あの子を雄にしないといずれ問題が起きるやも知れません。
三宅様のように」
え?なぜ?
そう言葉をのせようとした時、今まで以上に激 しく、突 かれた。
「あああっん!あーっく。
ひああっ!
止めろ!止めて、岡田!おか、だあ・・」
「止めて欲しいのですか?本当に?
ほら、こんなにもき つく食 い付 いているのはお前だろ!」
容 赦ない動きに思考は砕け散った。
「やめ、おか、やめ」
「止めて欲しくないよなイ カせてっ言えよ」
プライドはもうなかった。
「おね、がぁぁあっー!あーっ!」
「違うなあ、違うよな潤。
ちゃんと言わないと 抜 くよ」
「いやだおかだ!・・・もっと・・・おれを、こわ、せ」
「ふふふ、潤様は困った方だ」
気をやるまで赦してくれなかった岡田。
いや、違う俺が望んだ。
・・・翔、お前が満たしてくれればまた違う道があるのかな。
でも、オレはお前を抱きたいと思う気持ちに嘘はつけない。
抱かれたいとも・・・思う気持ちにも。
けれどお前は雄にはなれないのだろう?
続