Crazy Moon 漆黒の瞳 １３- ２
「いーだろ、別に」
「にいさん、そういう趣味があったんだ。
まあ、女の子みたいに綺麗な顔してたけどね」
「ふふん」
あの子の残した懐紙入れを、鼻先に当てれば、
着物に焚き染めた香の薫り・・・。
この香も自分で合わせているんだろうな。
『黒方』とも、ちょっと違う。
麝香が少し強いのかな？
あの子らしい、艶かしい薫り。
あんなに揺れる瞳になってしまったのは、
すべてを受け入れることを認めてしまったから。
もっと、強い光が宿っていたはずだ。
俺は、あの日、真っ直ぐに俺を向けてきた、
美しいあの漆黒の瞳に想いを馳せる。
続