「帰ろ、送ってくから」
「あ、でも、マネージャーが下で待ってるって・・・」
ゴシゴシ涙を拭きながら潤が言う。
「あ、ばか、そんなに擦ったら赤くなる」
慌ててその手を取れば、ビックとっして俺の手を振りほどこうとするからそっと握りしめる。
「お前送ってかないんだったら、俺が来た意味が無いじゃん。
マネージャーにはもう言って先に帰ってもらったからさ。送らせて?」
その手を握ったまま潤の荷物を持つ。
「これだけ?忘れ物は無い?」
「あ、うん・・・無い」
「じゃ、いこ」と楽屋を後にした。
翔さんがオレの手を離さないので、スタッフさんたちにすごく見られてるみたいだ。
「ねぇ、翔さん・・・手、離して・・・」
「ん?なんで?」
なんでって・・・。翔さんは平気なのかな。
仕事とかなら抵抗ないけど、さすがに・・・。
恥ずかしくって下を向いて、歩いていると、
急に立ち止まった翔さんの背中にぶつかってしまう。
「ね、潤は俺と手をつなぐの、嫌?」と真剣な顔で聞いてくる。
何て答えたらいいか解らず、固まっていると
「俺は、潤とこうやって手をつないでると、安心する。潤は違うのかな」
そう言ってまた歩き出した。
うん、翔さんオレもだよ。
オレもすごく安心する。翔さんがいるだけでなんか心が軽くなって大きく息が吸えるんだ。
うまく言葉にできないから、翔さんとつないだ手に力を入れてみる。
伝わるかな?
しばらくして、翔さんが小さく「ありがと、潤」と呟く言葉が、オレの耳に入って来た・・・。