あんたは知らない。
オレがどれだけあんたの事を思っているか。
あんたの愛情を一身に受けているあいつをどれだけ憎いと思っているかわからないだろう?
時折、あんたの香りに交じって彼奴の香りがするんだ。
身震いがするほどの怒りが俺を襲う。
その後に訪れる焦燥感・・・。
「そんなに欲しいなら、奪ってしまえばいい。抱いちゃえばいいんだよ。心なんて後からついてくる」
俺の気持ちを知っているあの人は簡単にそういうけど、そうじゃないんだ。
身体なんて後からついてくる副産物。
心が無ければ意味がないんだよ・・・。
また、見てる。
でも、だめだよ。
この人の眼の中に映るのはおれだけだもん。
お前にはやらないよ。
お前の手出しできる隙なんて絶対に作らないからさ。
ほら、あなたからおれにくっついてくる。
おれとあんたの隙間なんて心にも身体にもすべてにおいてどこにもないんだ。
あそこは、たいへんだね。
眼で話しかけると、頬杖をついたあなたは、見ていておもしろいと笑う。
本当に悪趣味なんだから。
でも、本当に可哀想なくらいおもしろい。
だって、ぼくらは知っているんだ。
あの人の本当がどこにあるのか、知っているからこそできる高みの見物。
あの人に踊らされて、いる、のに。
かわいそ、だねぇ。
ふと、机の上の花に眼をやる。
そこにあるのは、真っ赤なサルビア。
その花かごの中から2本選び取り、手の中に綴じ込める。
フフフ、思わず笑いが毀れる。
何?とでもいうように二人の視線が集まる中、とじ込めた花をぐしゃっと潰した・・・。
二人の『熱い思い』を踏みにじるかのように・・・。
8/7の花 サルビア<赤> 花言葉は熱い思い