結局、脱退ということにはならなかったけれどかずはおいらに何も言うことなく旅立って行った。
それからの2ヶ月、仕事は忙しかったけど、おいらは何にも感じなかった。かずのいない分、頑張る。そんで、かずに見直して貰うんだ。
そう、決めていたから・・・。
「大野さん、明日オフだよね?俺ん家で7時からだから、釣り行っちゃダメだからね」
収録後、潤君と翔くんに呼び止められた。
何の事か解らないおいら。キョトンとしていると「え?カズからメール来てないの?」と潤君。
「・・・着拒されてるんだもん。かず、おいらの事嫌いになっちゃったんだもん」
言葉にした途端、我慢していた泪が流れ出す。
「智くん・・・」
「おいらが悪いんだ。だから、かずの分も頑張って、そんで許してもらおうと思って、でも、でも、帰ってくるのも教えてくんないなんて!もう、ほんとにダメなんだ・・・」
「何泣いてるんですか。もう、本当にあなたはバカなんだから」
え?この声?
振り返ると、満面の笑みを浮かべたかずが立っていた。
「そりゃあ、かなり傷つきましたよ、ワタシ。だから連絡を取らなかったんですけどね」
「かず?本当に、かず?」
「もう、人の話、聞いてます?」
かず、だ。目の前にかずが立ってる。
おいら気がついたらかずを抱き締めていた。「ちょっと、も~」と言いながらもされるがままの、かず。
泪が流れる。でも、さっきとは真反対の泪。
「あ~、感動の再会のところ悪いんですけど、続きは楽屋か自分家でやってね」
「おかえり、カズ。明日7時、遅れんなよ」
「じゃあね」と二人は笑いながら帰っていった。
「ほら、智も行こ?」身体を引かれ泪が止まらなくて下を向いたままのおいらの手を引く、かず。
かずの手はやっぱり、子供みたいに暖かかった・・・。