4月に入った頃。
西郷さんと会った。
少し引っ越しの片づけを手伝って欲しいとの事だった。
内心舌打ちをしながらも、ちゃんと結婚する話をしないといけないと言うことも思っていたから、私は、西郷さんと会うのはこれが最後と言う気持ちで会った。
彼はまた近所に住む事になり、「またよろしくね」と言って来た。
片づけも一通り終わり、と言うか、来た時点でほとんどやる事は無かったけど。
一息ついてぼんやりとテレビを観ながら、どう切り出そうかと思い悩んでいた。
時間はどんどん過ぎていく。
部屋の外も暗くなりかけ、追い打ちをかけるように切ない「ふるさと」が市内に響き渡る。
あー、気分が滅入るわ・・・と思いながら、意を決して、「私、結婚することにした」と唐突に口にした。
その時西郷さんは、まるで聞いていなかったかのように、微動だにせずテレビを見たままだった。
聞こえてなかったか?と思いつつ、とつとつと事のいきさつを私は話した。
一通り話し終えた辺りで、西郷さんはようやくモゾモゾと動き出す。
でも何も言わない。
ダンマリはいつもの事か・・・と思ったし、私達はこれまでそうした話をお互いに避けて来た所はあったから、そんな話されてもなと思ってるだろうなとも感じていた。
すると彼は黙ったまま、ベランダへ出てタバコを吸いに。
何だよもう、何も言わないならこのまま帰るぞー!!
と思ったし、一言声を掛けて帰ろうかとも思った。
でもこのまま帰るのもなぁーとか色々と考えている内に、戻って来た。
すると、
「突然だから・・・」
と、隣に座ってポツリと呟いた。
顔を見ると、彼の目には涙が・・・。
これにはさすがの私も、絶句した。
泣く程のこと?ってゆうか、そこまで考えてたの?
とか、頭の中で目まぐるしく疑問が渦巻く。
彼は、突然の事で頭が真っ白で何も考えられない、何を言っていいのかが分からないと言う。
私との関係もズルズルと続けている事は良くないと思っていたし、少なくともちゃんと考えていたと。
でも、それは私には伝わっていなかったし、私は結果的に結婚相手として見る事は出来なかったわけで。
なんかこう来るとは想定外だったため、私も黙り込んでしまった。
かと言って同情して付き合いを続けて行くことは出来ないし、結婚をやめるつもりもなかった。
「もう会えないの?」
と言われた時には、ここは私のダメな部分でもあるけれど、少し同情してしまった。
でも、
「頼りになる人が居なくなるなんて・・・」
と言われた時、目が覚めた。
そうだった!こいつはこう言うヤツだったんだ!!
私が好きとかじゃなくて、頼りたいだけなんだよ。
困った時に一家に一台!みたいな、何かあれば私が助けてくれると思ってる、そんな私が居なくなるから困るだけであって。
もう、呆れるね。
「もう私を頼らないで」
と言うと、また涙を流し、
「今は何も考えられない」
と言う。
だー、もう。どうするんだよ・・・。
それでも「バイバイ」と言って後にすれば良いのだけど。
「ちゃんと話したい。時間が欲しい」
と言って来た。
まぁ今は異動したばかりだし、何の前触れもなく突然結婚すると言ったし、混乱してるのかもしれないと思ったから、
「結婚する事には変わらないけど、ちゃんと話す事で納得出来るなら」
と言った。
気持ちの整理をつけたいから、仕事が落ち着いたらちゃんと話がしたいと言うことで、この日を後にした。
西郷さんの存在について、Mさんには伝えてある。
Mさんは、西郷さんが納得出来るようにしてあげてと言う。
自分が逆の立場だったら、やっぱり辛いし気持ちを引きずってしまうから、だそうだ。
確かに引きずるのは辛い。それは私も身に染みてよくわかる。
でもきっと、彼の事だから、時間が経てばケロッとしてるんだろうな。
