
畑で実ったゆずです今年は豊作です。
今日は母と子のお話です。
この子は小学校五年生の女の子です父親は漁業を営んでいます。この子には高校二年と中学一年の兄がいます。突然母親が死んでしまいました。しばらくして父親から(魚を取りに行っているとき家は留守になる。家を預かる者がいないといけないから、今度新しいお母さんが来るから)と言われました。兄二人はすんなり納得しましたが、この子は「死んだお母さんがかわいそうだ」と反発して激しく父親を憎んだのです。やがて新しい母親がやって来ました。しかし、この子は新しい母親に一言も口をききません。新しい母親が心を込めて縫ってくれたブラウスに手をふれようともしません。学校から帰っても「ただいま」ひとつも言わず自分の部屋に閉じこもります。「お帰りなさい」と言われても返事ひとつせず全てこの新しい母親に反抗したのです。しかしこの新しいお母さんはいつもにこやかでおだやかな人でした。しかしこの子の事を考える時本当に悲しい顔つきになっていました。この子が中学に入って間もなくの事です。家庭科の先生から、生理帶の共同割引購入があるので、家の人と相談して申し込みなさいといわれたのです。この子は、母親になど相談するものかと思い学校でくれたチラシを捨てようと思いました。でももし自分が使う必要があった時どうしたらよいかわからず本当に困ってしまったのです。悩みながら家に帰ると母親は縫い物をしていました。「お帰りなさい」という言葉も無視して立ったままそのチラシを母親に投げ出すように渡したのです。母親はしばらくチラシを読んでいましたが、静かに立ってタンスの引き出しから小さな袋を持ってきてこの子に差し出しました。「あきちゃんそのチラシに書いてあるのと同じだと思うけど、女の子はねいつなるかわからないのよ。その時に慌てないですむように買っておいたんだけどこれでいい?」と優しく母親は言ったのです。この瞬間、この子は感きわまって泣き出しました。この瞬間の感動をこの子は次のような作文で語っています。「(母さんごめんね)」と言おうと思っても声が出ませんでした。そして小さい子供のようにワァーワァーと声を出して泣くばかりでした。本当に悪かったと思いました。この二年間、お母さんはどんなに私のために辛い思いをしてきたかわかりません。それなのに少しも私を憎みませんでした。泣いている私の肩にお母さんの暖かい手がおろされました。私は思わずその手を握ってまた大きな声で泣きました、そしたらお母さんも泣いていました。私たちは抱き合って、いつまでも泣いていました。私が泣きやむとお母さんの「クスン」と鼻をすする音が聞こえ、私はまたお母さんに強くすがって泣きました」その夜兄たちはこの母親と妹のはじめての笑い声に戸惑ったものです。思わず二人の顔をのぞき込むと、母と妹は大きな声で笑い、そしてひっきりなしに涙を流していました。兄達もわからないけど大きな声で笑い出したということです。本当の母親にもまさる、理解ある心情を知ったとき、憎しみも消え愛情を感じたのです。これは20年以上前の話です。再婚した相手の子供を虐待したり自分の子供を虐待したり悲しい世の中ですが、たったの20年で人間が変わってしまったとは思いません。人間が気づいたとき素晴らしい可能性と愛情を持っていることを信じます。