インフルエンザの流行時には必ず異常行動の話を聞きます。異常行動とは、発熱してから2日目以内に、訳のわからないことを言い出したり、他の人には見えないものな見えるようなそぶりをしたり、かと思えば大声で笑い出したら泣き出したりという情動の変化が起こる場合もあれば、無表情になり受け答えの反応が鈍くなるというケースもあります。

異常行動の多くは、睡眠から覚醒するときに、まだ夢の中にいるような、夢が覚めきらないようなぼんやりした状態になるようで、話が全く通じないわけでもないし、意識がなくなる状態でもない、でもクリア(=意識清明)とはいえない、というような感じです。


インフルエンザの最も恐ろしい合併症はインフルエンザ脳症で、私も経験がありますが、あれよあれよと言う間に意識状態が悪くなって、けいれん発作が止まらなくなり、画像検査では脳が溶けたような所見で、処置も虚しく来院後数時間で亡くなりました。毎年インフルの流行時には全国で100人から200人程度の犠牲者が出ます。このインフルエンザ脳症の初期症状はやはりぼんやりとしてる、とか、話が噛み合わないといった、異常行動と見分けがつかない症状なので、こうした症状が見られるときには、その症状が半日以上続いていないか、間欠期にちゃんとクリアになっているか、意識障害の度合いが目に見えて酷くなっていっていないか、目を離さずに観察してあげることが重要です。


また、一時的な異常行動であっても、いきなり立ち上がってドアを開けて飛び降りてしまう、というような事例も複数報告されています。これは、タミフルなどの抗インフルエンザ薬を投与してもしていなくても起こりうるので、子供さんがインフルエンザにかかったときは、少なくとも二日間は目を離さないように気をつけてあげたり、玄関や窓の鍵をしっかり掛けたり、対策を取ってあげるとよいでしょう。