恋シェのためのその①は『マクベス』

※劇団四季『恋におちたシェイクスピア』をより楽しむために、シェイクスピア関連の作品を読んでいるyo

 

 

恋シェのためのその②

 

『ロミオとジュリエット』。松岡和子氏の翻訳で。

 

内容紹介(上記ウェブサイトより)

モンタギュー家の一人息子ロミオは、キャピュレット家の舞踏会に忍びこみ、その仇の家の一人娘ジュリエットと一目で激しい恋に落ちてしまった…。宿命的な出会いと、短かく悲しい破局をむかえる話はあまりにも有名であり、様々な悲恋物語のモチーフとなっている。その代表的傑作をさわやかな新訳で。

 

以下、引用は『シェイクスピア全集2 ロミオとジュリエット/松岡和子訳、筑摩書房』より。

 

 

思い違いがたくさんあった

 

ロミオとジュリエットが愛を誓い合い、最後にふたりとも死んでしまう――。
あまりにも有名な結末。

てっきり「観客にとっては予期せぬ衝撃のラスト」だとばかり思い込んでいたのだが、実際はそうではなかった。

作品冒頭には「序詞役」という人物が登場する。
観客に向かって舞台の背景やテーマを語る役割で、『世にも奇妙な物語』のタモリさんのような存在だ。物語の登場人物ではない。


そしてこの序詞役が、原因から結末までを最初にすべて語ってしまう。
つまり、ロミオとジュリエットが不幸な死を遂げることも、冒頭で明かされる。
観客は悲劇的な結末を承知のうえで物語を楽しんでいたのだ。

ちなみに『ロミオとジュリエット』は、アーサー・ブルックの物語詩『ロミウスとジュリエットの悲劇の物語』を下敷きにしている。当時どの程度知られていたのかは不明だが、すでに有名な題材だったらしい。

 

 

つめの思い違いは、『ロミオとジュリエット』を「格調高い悲恋の物語」と思い込んでいたこと。

実際には冒頭から下ネタで始まり、物語のあちこちに俗っぽい笑いが散りばめられている。

その代表格が、ジュリエットの乳母とロミオの友人マキューシオだ。

 

乳母は自分の性体験を匂わせたり、身体の部位を口にしたりと下世話な冗談が多い。

 

対してマキューシオは、頭の回転が速く、たぶん知的で、言葉遊びの要素なども入っているのではないかと思われる。「たぶん」、「思われる」なのは、日本語で読んでいるし元ネタがわからないから…。それでもテンポの良さやユーモアが伝わってくる。

 

 

う一つ、思い込んでいたこと。

ジュリエットは女子高生(16~18才)くらいかと思っていたら、なんと14才を迎える直前だった。中学生かい!

でも、たしかに、あのピュアな雰囲気は14才であるほうがしっくりくる。

ロミオとは最初で最後の一夜を共にするわけだが、描写は朝チュンなのでイメージは損なわれず。

 

ちなみに、日本の朝チュンの“チュン”はすずめだが、ロミジュリの“チュン”はヒバリだ。

初めてふたりで迎えた朝なのに、ロミオはティボルトを殺してしまった罪ですぐにでもヴェローナを出ていかなければならない。ジュリエットはロミオを必死で引き留めようとする。

 

もう行ってしまうの?まだ朝じゃないわ。

あなたのおびえた耳を貫いたのは

ナイチンゲールよ、ヒバリじゃない。

 

(第三幕第五場)

 

『黒博物館 ゴーストアンドレディ』において、フローと初めて対面したデオンが口にした台詞である。

本家は健気で可憐なのに、デオン様の禍々しさったら…。

 

 

男子三人組

 

ロミオの友人として登場する二人の男子が、ベンヴォーリオ(親戚でもある)とマキューシオだ。
現代風にいえば、男子高校生三人組といったところ。

 

 ロミオ → ヒーロー(ヒロインの恋のお相手)

 ベンヴォーリオ → 真面目タイプの友人

 マキューシオ → 明るくお調子者の友人

 

マキューシオの軽口にベンヴォーリオが冷静にツッコミを入れ、ロミオは振り回されつつもつるんでいる。そんな様子が高校生っぽい。

 

そして思いがけないことに、ジュリエットと出会う前のロミオには片想いの相手がいたのだ。知らんかった…。
彼女に夢中になりすぎているロミオを心配して、ふたりは「もっといい子がいるはずだ」と敵方キャピュレット家のパーティーへ連れ出す。
結果的に、そこでロミオとジュリエットが運命の出会いを果たすわけだ。

 

 

マキューシオについて

 

マキューシオは冗談好きで陽気なキャラに見えるが、実は血の気が多く喧嘩っ早い。
同じく血の気が多いキャピュレット家のティボルトと争いになり、刺されて命を落としてしまう。

死の間際、彼はこんなことを吐き捨てる。

 

やられた。

どっちの家もくたばりやがれ!

 

(第三幕第一場)

 

ちなみに、「どっちの家もくたばりやがれ!」は三度言う。大事なことだったに違いない。

ロミオたちと仲良くしながらも、心の底には複雑な思いがあったのだろうか。

マキューシオに心惹かれたのは、最後に毒を吐き、人間の暗さをのぞかせたところに魅力を感じたからだと思う。

 

それでも最後まで彼らしいのは、瀕死でも言葉遊びをやめないところだ。

 

ロミオ しっかりしろ、大した傷じゃない。

マキューシオ まあな、井戸ほど深くない、教会の入り口ほど広くもない。でもこたえる、効くよ。明日、俺に会いに来てみろ、はかなく墓に納まってるよ。

 

(第三幕第一場)

 

マキューシオの死を境に物語のトーンは暗くなり、悲劇へと転じてゆく。

 

 

「ピュアな恋」を潰した報い

 

両家の対立が原因で、ティボルトとマキューシオが亡くなり、ロミオとジュリエットも自ら命を絶った。

 

…という筋書きは知っていたが、この四人のほかにも死んでいた人物がいたとは露知らず。

 

ジュリエットに縁談を申し込んでいた若者パリスもまた、運命に巻き込まれて命を落としていたのだ。

彼はただ真っ当に結婚を望んだだけの、いわば「当て馬」の存在。哀れすぎる。

 

こうした犠牲の上でモンタギューとキャピュレットは和解するけれど、大切な息子も娘もいなくなってしまった。和解は訪れても、何も残っていない。

何かが残っているとするならそれは「ピュアな恋の切なさ」だけかもしれない。

 

 

おわり。