田中奏次、運送会社に勤める男である。
就業時間ギリギリに職場から貸し出されている携帯が鳴った。
仕事場から自宅へはさほど時間がかからない為、少しくらい帰りが遅くなってもいいかと思い電話に出るのだが、出たことを後から後悔することになる。
「もしもし…田中さんでしょうか?」
「はい。そうです。ご用をお伺い致します」
「…今日届いた荷物についてお話ししたいことがあるのでお仕事が終わってから来ていただけますか?」
「えっと、あのー。そういったことはしていないのですが…」
「どうしてもお願いします。○○マンションの304です。お待ちしてます。」
「え、ちょ、あの!………」
女性というよりは少女であろう声の主は淡々と話し、一方的に電話を切ってしまった。
(○○マンションか…………)
「おーい、田中どうした?」
「いえ、なんでもありません。」
「そうか、仕事熱心もいいが携帯さっさと返して帰れよー」
盛大に笑いながら帰っていく部長を見送りなからこっそりとため息をついた。
(さて、俺も帰るか…)
