前の暮らしは雨の降りだしは音で知った

桜の木の葉を叩く音や

椿の葉に打ち付ける音

 

今の暮らしは音がしない

代わりに道路を照らす照明が

長いスカートを纏ったように光の裾を長く伸ばす

 

大きな水たまりに打ち付ける雨

その跳ね返りで雨の強さを知る

 

音のない世界

 

雨が見えるのに

雨の音がしない

 

今宵は雨

聞こえない 雨