本好き古本屋の矛盾は、本当に好きな本は売りたくないのだ。
売ってもいい本は、まあ、それなりの本だ。
希少な本を生活のため売ってしまって、ああ、なんで売ってしまったんだろうと後悔する。
ブックオフでよく見るバーコードをスキャンして売れそうな本だけ、ごっそり買っていく転売ヤー。
かつて梶山季之が書いた「せどり男爵数奇譚」のような頭の中に膨大な知識を持って本を漁る裏街道の存在は生きていけない世の中なのだ。
本は場所を取る。それは大きなデメリットだ。
だがそれゆえに世の中の本を循環させる動力でもある。
新刊書店・古本屋・図書館は、それぞれが本の供給を補完する存在で、競合やライバルではない。
それぞれの役割で本の文化を守ってきたのだ。
本のデメリット・場所を無くすデジタル化は、実は本の循環の動力を失くすことでもある。
見えないもの・実物のないものは、なくなっても気付かないのだ。