ずいぶん昔に買って、今さらながら読んでみた那須川天心初の自伝「覚醒」

幼少期からRISE世界王者に、そしてRIZINに参戦するようになった2017年12月までの彼の道のりを書いた本だが、幼少期の過酷な練習環境が今の彼をつくったのだと、あらためて知ることができた。

今の彼の知名度や人気、積み重ねてきた戦いの数々は言わずもがなだが、ファンだけでなく、アンチも含めて人々を引きつけるその類稀なる才能も、幼少期の過酷な練習環境があったからこそ。

言葉は悪いが、客観的に見れば「虐待」に受け取られてしまう部分もあったかもしれない。

印象に残ったものとして、那須川夫妻が語った以下のようなエピソードがある。

父　空手の試合で、天心が負けるのを見るじゃないですか。天心もそうですけど、僕も負けず嫌いなんで、「これは負けさせないようにしないと」って。でも、学校が終わっても遊びに行かせずに練習ばかりさせていたから、夏休みとかにたまに「今日は遊びに行ってこいよ」って言うと、天心は遊び仲間がいないんですよ。天心が友達に電話して「今日遊んでくれる？」って言っているのを聞いた時は、ちょっと涙ぐみました。もしかしたら、天心にひどいことをしているのかもしれないって。

母　私は天心が「ちょっとは遊びたい」と思っているのはわかっていました。うらやましそうに「誰々はどこどこに行くんだって」と話す時が度々あって。幼稚園から小学校低学年は「やらされてる感」が強かったと思います。でも、「プロになる」って決めた後は、どうやったら強くなれるか自分で考えるようになりましたね。

ー天心選手からは、試合で勝っても動きが悪いと怒られたと聞いていますが、かなり厳しい指導ですよね。

父　試合会場で叱ることはないですが、帰りの車の中から反省会をしていました。家に帰ると「上に上がれ」って、サンドバッグを吊るした練習部屋行きです。指定したメニューをやり切れるまで、3時間かかろうが、4時間かかろうが、ずっとやらせました。必ずやりとげろ、必ずできるから、と。もちろんやり方は教えます。

ーその間はずっとそばで見ているんですか？

父　見ています。僕も労力はかかりますけど、やっている天心は大変ですよ。飯も食わずに、最後は泣きながらでした。でも途中でぶん投げさせたことは1回もないです。

母　私も何度階段下で涙したことか。かわいそうで「なんでここまでやんなきゃいけないの？」と思いましたね。

少年にはあまりに苦しい日々だっただろう。ただ、その過酷な日常が今の「那須川天心」をつくった。

世紀の一戦と謳われた「THE MATCH」

あの試合の少し前には父との確執もあったという。

なぜ那須川天心の父・弘幸が対戦相手のセコンドに？「いまは風音との絆の方が強い」「息子だろうと関係ない」“禁断の親子対決”の真相（布施鋼治）「俺はアイツの想いに心が揺れちゃったんですよ」声の主はTEPPEN GYMの那須川弘幸会長だ。アイツとは4月2日、RISEラストマッチで那須川代表の長男・那須川天心と闘う風音を指す。続いて弘幸代表は、こちらの胸に突き刺さる台詞を呟いた。「いま

読書(11) 【覚醒】