2020.4.22撮影(ボヤジ)

 

 

おはようミュウ

 

 

毎朝私を起こしに来るのはミュウの日課だった

 

起きてすぐ眼鏡をかける事も知ってるミュウは、私がなかなか起きない時にはベッドのヘッドボードに置いてある眼鏡ケースを私の頭に落として起こしたりもした

 

おはようの挨拶に

いつもニャッて可愛く短い声で返事をしてくれるミュウ

 

足元から羽毛布団に飛び乗って来て、

ザッザッザッと歩く音、重さでボヤジかミュウかすぐわかる

 

ふと、寝返りをうつ時に足元に重さを感じると、そっと邪魔しないようにしたり

ゆっくり起きて、手を伸ばし、そこで寝ているふわふわを撫でる至福の時

 

 

おはようミュウ

 

 

いないって分かっていても

毎日名前を呼んでみる

声をかけてみる

 

いない実感に涙が溢れる

 

 

 

2020.4.14撮影(ミュウ)

 

 

4月15日(水)

いつもならミュウが起こしに来るのにこの日はボヤジが来た

 

珍しいな、と思いつつリビングに下りていくと、ミュウの姿がない

 

フローリングには数カ所、嘔吐の跡

猫ベッドに粗相の跡

ソファーに敷いている猫用のマットが床に落ちている

2人で激しく戯れ合った後の様な抜け毛が少し散らばっていた

 

もう一つの猫ベッドの毛布がこんもりしている

 

毛布にもぐっているミュウを抱き上げた

 

大きな声でニャーッと鳴いた

 

抱き上げてすぐに両脚の異常に気づいた

 

足先が少し冷たく、そして、下半身に全く力が入っていない、だけど関節も曲がらない

 

乾いた鼻に毛布の毛がついている

抱いたまま、それをとってあげた

 

ミュウは私にしっかりとしがみついて来る

爪が肩に刺さる痛さはどうでも良いくらい

ミュウの心臓のドキドキが私の心臓のドキドキとリンクし、ただただ落ち着かせるために抱きしめたまま撫でた

 

正直、何が起こっているのか全く理解不能だった

 

急いでエナジーチュールをあげてみた

1本ものすごい勢いで食べた

 

食べる食欲はある事に少しほっとした

 

 

少し落ち着いた頃、猫ベッドに寝かせてみた

前脚、上半身は通常の力があるため、寝返りは自力でも出来るけれど、急に下半身が動かなくなった事にミュウ自身もパニックになっているようだった

 

お水を口元まで持っていくと勢いよく飲んだ

 

 

インターネットで症状を調べるとすぐに『心筋症による血栓』というワードがヒットした

発症後の事など、怖い事しか書かれていない、、、

基本的に治療法はない、、と

 

今日はかかりつけ医は休院日

別の病院で救急で診てくれる所はないか探して2つの病院にアポを取ってみた、繋がる方、対応の早い方にすぐ向かおう

 

すべては最善の采配があると信じて

 

病院へのアポ取りが出来たと同時にタクシーを呼ぶ

 

 

 

2020.4.15 気をつけてにゃ

 

 

タクシー到着までの12分

自宅から病院までの18分

病院に連絡してから30分

 

時は動いているけれど

止まっている様だった

 

 

 

 

 

 

タクシーの中でか細くニャーと鳴くミュウに

大丈夫だよ、大丈夫だよと声をかける

 

 

初めての病院

初めての先生

今のこの現実に不安しかないけれど

どんな結果であれ、受け入れる覚悟をした

 

血液検査、レントゲン撮影をしてもらった結果

・肥大型心筋症による動脈血栓塞栓症

・甲状腺の数値の異常

・肺水腫

 

「血栓により足に血が通わなくなっていて、このままだと両脚壊死する可能性もある」

「血栓溶解剤もあるけれど、24時間以内に注射する必要がある。ただ、効果があるとは限らず、高リスクでもあり、高額でもある。使いたい場合は、当院には置いていないため別の救急病院へ行く事をおすすめする」

 

 

『何も打つ手がない』

この状態を完全に委ねられた

 

血液検査の結果も、一つ一つ丁寧に説明してくれたとても良い先生

 

入院も進められたが、入院はさせたくない事と、痛みを和らげる薬をお願いしたい、明日、かかりつけ医にもう一度相談したい、と伝えると血液検査結果とレントゲンのデータを渡してくれた

 

 

帰り道、すぐにタクシーを拾えた

 

お家に帰ろう

 

ミュウも帰りのタクシーでは落ち着いていた

 

 

 

2020.4.15 お家が一番にゃ

 

 

足先は冷たいままだけど、

ずっと足と肉球のマッサージを続けた

1〜2時間おきに寝返りもさせて

 

上半身を起こした状態で

コップに入った水も飲んだ

 

動きたそうにしていたから

私がミュウの後ろ足になった

 

いつのまにか、曲がらなかった関節が曲がるようになって、足先、踵、力は入らないけれど、柔軟になっていた

 

座っている時と同じ感じで足を畳み、私が持ち上げると、ミュウは前脚だけで歩く

 

自分の行きたい所へずんずん歩いて行く

 

 

トイレの前まで来た

 

身体全部をトイレに入れてあげた

倒れないように支えた状態でオシッコもウンチもした

 

再び、私が下半身を支えた状態でミュウは前脚だけで歩く

 

 

ベッドに戻って来た

 

コレを何度か繰り返し、ごはんのお皿の前に行ってみたり、流し台に上ってみたいと訴えたり

 

出来る限り自分の力で行きたい所へ行かせてみた

 

 

私がお風呂に入っている間に、急変してしまわないか、気が気でない

 

 

水を飲む

 

トイレに行く

 

少し血の混ざった軟便

 

1時間おきに水を飲む

 

 

トイレに行く

もちろん下半身は支えてあげて

 

おしっこをした

 

水を飲んだ

 

オシッコをした

少しだけチュールをなめた

 

 

水を飲んでくれてうれしくて

オシッコをしてくれて安心して

今迄の何気ない日常がこんなにも奇跡だったと初めて気づく

 

 

そして

夜が明け4月16日(木)

 

かかりつけ医の開院時間8:30にすぐ電話

症状を伝え、すぐに連れて行った

 

昨日診てもらった病院での血液検査結果、レントゲンのデータも診てもらった

 

 

 

2020.4.16 高酸素濃度のICUの中にゃ

 

 

心拍数も呼吸も早いけれど、

口で呼吸をする感じではなく、一見大丈夫そうにも見える

 

病院で出してもらったごはんは一切食べない

 

「血栓塞栓症は残念ながら完治する事はなく、通常、発症から24時間もたない事も多い」この言葉にかかりつけ医の前でも涙が溢れた

 

血栓塞栓症に加え、甲状腺機能亢進症、肺水腫、、

 

どうする事も出来ないこの状況にどうしたらよいのか

ただただ時間だけが来ては過ぎてゆく

 

 

 

 

 

ICUのガラス越しにミュウと繋がり

延命はしない

猫の尊厳を守る

出来る限りの事はする

ミュウが嫌がる事もしない

 

コレだけは決めた

 

 

お家に帰ろう

 

 

午前中ICUで過ごし、鎮痛剤と抗血栓剤の注射、甲状腺機能抑制のお薬を飲ませてもらい、家に帰る事にした

 

夕方もう一度、鎮痛剤の注射

もしご飯を食べられそうだったら甲状腺機能抑制の飲み薬も出してもらうという約束の元、病院を後にした

 

 

 

2020.4.16

 

 

12:30 帰宅

水を飲み、その後オシッコをした

 

ペットシーツを買いにスーパーへ行ってる間に急変してしまわないか、気が気でない

 

今迄ペットシーツを使う必要もなかった事に感謝した

 

帰宅すると、ミュウが寝ているベッドに毛玉を吐いていた

 

毛玉を吐く力が残っている事に驚いた

 

 

 

もう病院行かないにゃ

 

 

少しでも何か食べやすいものを、とスープ状のご飯も買って来た

 

一口だけなめた

 

 

夕方もう一度鎮痛剤の注射の予定だったが、キャンセルの電話をした

 

 

ミュウと約束したんだ

もう病院へは行かないって

 

 

20:10 発作のような感じで大きく身体をねじった

 

それからゆっくりゆっくり

 

時折呼吸と一緒に可愛くニャッと声が出る

 

 

ゆっくりゆっくり

 

 

ミュウの心臓と私の心臓がリンクする

 

意識はここにあるような無いような

 

でも心臓も動いていて

呼吸もしていて

 

両手を前にぐーっとのばして何かを掴んで

 

 

ゆっくりゆっくり

 

 

ミュウちゃん

 

ミュウちゃんの人生は楽しかったかな?

 

私はミュウちゃんと出会えて一緒に過ごせてとても楽しかったよ

 

本当にありがとう

また必ず会おうね

 

 

 

 

 

 

もう向こうへいってしまいそうなミュウを優しく自分の元へ

全身で感じたあたたかさ、やわらかさ、鼓動、振動、すべて

 

2020年4月16日 20:41

 

とても美しいミュウは

とても美しく旅立った

 

時が止まった時

 

もちろん猛烈に悲しいけれど

この神聖な瞬間を共有してくれたミュウに感謝しかない

 

私だけが観ていた

私とミュウだけの

神聖な瞬間

 

 

 

 

 

 

いつも通り2つごはんを用意する

 

猛烈に悲しいけれど、以外と冷静な私もいる

 

 

翌日(4月17日)

火葬はどうしたらよいのか、どこにお願いしたらいいのか、悲しみにくれる間もなく色々と準備を始める

 

 

 

 

 

 

最近デジイチにゃんで撮った一番いい写真を選んでプリントしたり

 

写真を見返してはまた涙したり

 

もっと沢山写真を撮っておけば良かったなって涙したり

 

涙ってこんなに出るんだってビックリするくらい

 

 

 

2020.4.17

 

 

近所のお花屋さんで閃くままに選んだお花
・ピンクのトルコキキョウ(優美)
・白のカーネーション(純粋な愛、尊敬)
・かすみ草(清らかな心、無邪気、感謝、夢心地)

何気なく調べた花言葉に

ミュウにピッタリだとちょっと嬉しくなった

 

 

 





お花屋さんで偶然居合わせた近所に住む外国人がいた


彼は奥様の40歳のお誕生日のために花束を買いに来てて、
私はミュウが亡くなって花束を買いに来てて、
それぞれに違うドラマがあるんだけど、「花」を贈る事は共通してて、
新たな年の始まりと
新たな旅の始まりと
喜びも悲しみも表裏一体で
感慨深いなと思ったり

 

 

 

僕があげるにゃ

 

 

お花、ボヤジが食べちゃうから近くには置けなくて、どうしようと悩んだり

 

 

 

2020.4.17

 

 

ファインダー越しのボヤジを観ては涙し

 

抱きしめてはすべてを感じ

「生」と「死」の尊さを学び

 

時が止まった時

 

 

ミュウという存在と過ごす最後の夜

 

 

 

バステトにゃんをお守りに

 

 

ずっと触れていたくて

ずっと撫でていたくて

ずっと話しかけたくて

ずっと近くにいたくて

 

この愛おしい存在が

見えなくなる悲しみ

触れ合えなくなる寂しさ

 

 

無情にも夜が明け

時が近づいて来る

 

 

 

2020.4.18

 

 

ミュウの旅立ちに、

またたびの木と、お気に入りのおもちゃにボヤジのヒゲ、青い鳥の羽を持たせてお別れ

 

 

4月18日 正午

この日は記録的な豪雨

 

葬儀はジャパンペットセレモニーにお願いした

自宅での訪問個別火葬

 

 

 

 

 

 

最後のお別れの時

 

実は、この時不思議な事があった

 

最初に準備してた青い鳥の羽がどこかに消えてしまい、探しても探してもなくて、、

もう一枚家にあったのを持たせた

 

 

豪雨の中

時を待つ

 

時を待つ時

時は動かず

時を忘れる時

時は動き出す

 

時は止まったまま

 

 

ミュウの遺骨を拾いながら、一つ一つとても丁寧に対応してくれた担当者(女性)に、ふと、『このお仕事長いんですか?』って聞いてみた

 

もう3年になると言うこの方は、以前は人間の納棺師をされていたそうで、自分の愛する猫を亡くした際に訪問火葬をお願いして、とても良かったから転職したという

 

何だか、この方に担当して頂いた事に、ご縁に感謝が溢れた

 

言葉少なくも、溢れる人柄

一つ一つの所作に表れる美しさ

 

 

今迄見えなかったミュウのお骨

本当に小さい小さい所まですべて

これらすべてがミュウを動かすのに役立っていたと思うと感動しまた涙し

 

 

みえないすべてが

みえるすべてを生かしている

 

 

見送った数時間後

豪雨から嘘みたいに晴れた空

 

 

 

2020.4.18

 

 

 

ミュウが空から見守っている

 

 

 

ニャ♡

 

 

そういえば、

最近空を見上げてなかったな

 

移り行く「空」

流れ行く「空」

 

 

 

 

 

 

「空」って何にでもなれる

 

「空」ってソレを思い出させてくれる

 

 

 

 

 

 

「空」っていいね

「猫」っていいね

 

 

時が止まった時

また

時が動き出す時

 

 

 

2020.4.23撮影(ボヤジ)

 

 

おはようミュウ

 

 

時が止まった時

それは

時を超えた瞬間

 

 

 

We are the Cat

 

You will be assimilated

 

Resistance is futile

 

 

Live long and prosper

 

 

2020.04.14-23撮影

(協力:デジイチにゃん、コンデジにゃん、iPhone8にゃん)