番外編の唐松岳その2です。
 
当初の目的地であった八方池にやってきたところ、時刻は7時半くらい。ホントは立ち寄りたいけど、ここまで思ったより時間がかかってしまった(汗)。帰り道に寄れたら寄ることにし山頂を最優先とする!
 

 上から眺める八方池もキレイですな!雲海とのコラボも見事!と、八方池の上にある第三ケルンより見下ろす。奥に見える山々は白馬岳あたりか。
 
 八方池から先は本格的な登山道、岩がゴロゴロする道を登っていると急にダケカンバの林が出現する。八方池山荘を出てから初めての樹林帯だ!ここからしばらくは木々がお供になる!・・・なんとなく安心感がある。
 
ちなみに後で調べてみたところ、標高1,680m(黒菱平付近)~2,100m(八方池付近)くらいまでの間の土壌は超塩基性の岩で形成されていて、植物が育ちにくく本来この標高くらいの場所にあるダケカンバがないが、もっと標高が高い場所で見られる高山植物やハイマツが分布している。一方2,100m(八方池付近)~2,350m(扇雪渓先あたり)は砂岩泥岩が分布し植物に影響が無くダケカンバ林が分布し、本来あるべき高山植物が少なくなっているらしい。これを「八方尾根の逆転現象」という・・・みたい。ちなみに2,350mより高い場所は森林限界を超え再び木々が無くなり、ハイマツと高山植物が広がっているのである。
 ダケカンバの大木がいくつも生えている、なんとなくおどろおどろしい樹形で、ドラクエとかに出てくるオバケが出てきそうな雰囲気だ(ちょっとメルヘンなオバケ)。しかし、樹木があるというのは何とある心強い事であろうか!今まで樹木がなく下が丸見えのところばかり歩いていたので、万が一足をすべらせても木が助けてくれるような気がする!
 
 少し樹林帯が薄くなるところがあるものの、また木々の中に入る道が続く。上り勾配は結構きつくなってきた。ツレははっきり言って体力がないのでかなりしんどそう(汗)。待ちながら、休ませながら、励ましながらの登りが続く(他の登山者にはどんどん抜いてもらう)。
 
 と、頑張っていたら急に視界が開けた場所、扇雪渓の下部に到着!この時期のせいなのか雪渓は跡形もなく溶けていたが(汗)、たくさんの人が腰をおろし休憩しているのでしばらくここで休憩することに。
 
隣では仕事なのかこんなところで電話をしている女性が・・・しかし場所が場所なので電波が入りにくい。何度も電話がかかってきて出ては切れてを繰り返す女性に、同行の男性(旦那?)が業を煮やし「ここは電波悪から後で連絡するとメールすれば?せっかくこんな場所に来たのに」的な内容で諭すが、「なら先に行けばいいじゃない!」と応酬(汗)!その後電波状況が良くなったのか電話をし始める。男性は何も言わず待ち続ける・・・雪のない扇雪渓に反響しているのか、あたりには女性の電話の声が響き渡っていた・・・。
 
 扇雪渓から少し登ると森林限界を超え景色はいかにも北アルプスらしい景色に戻る!目標としていた一つの丸山ケルンはあと少し!せめてここまでは行きたいと思っていた場所だ!あと少し・・・と力が湧いてきてゴロゴロ岩の続く道を登り続ける。
 
何とか丸山ケルンに到着!ここでも十分達成感のある見晴らしと山を堪能できる素晴らしい場所だ!ここは尾根から少し飛び出したような地形になっているので、270度くらいのパノラマが楽しめるのだ!・・・景色を楽しむが頂上を目指すとなると急がねば(汗)。16時半が八方池山荘前から下るリフトの最終便、それまでには戻らなければいけないのだ!
 
現在時刻は10時近く・・・予定より(普通の人の到達時刻より)1時間ほど遅れている感じだ!もう4時間近く歩いていることになる!ちなみに、一般的な上りの八方池山荘~唐松岳の到達時間は4時間半ほどらしい・・・。あと30分は絶望的だな(汗)。まあ、ゆっくり自分のペースで行けるところまで行こう!!!と登山再開!
 
丸山ケルンから先はハイマツぐらいしか樹木がない道、かつ崖のようなところの際を歩くような場所や、急登・狭い一方通行(上り下りどちらかの通過待ちが必要)が多く、あまり早くは進めない。少し進んでは小休憩しつつ登っていく。この辺りまで来ると私もあまり余裕はない(汗)!しかし、一方通行の通過待ちがいい休憩となり助かった!正直しんどくなってきて、ここから先はほとんど画像が残っていなかった(笑)!どこを撮っているのかもわからない上の画像が唯一の画像だ(汗)!
 
・・・と踏ん張り続けていると、あと少しで唐松岳頂上山荘近くの分岐点(八方池、五龍岳、そして不帰嶮への3つのルートの合流地点)だ!そこが見え始めた場所まで来ると、左右崖のような場所や崖スレスレの場所が!しかしこれでもまだ北アルプス初心者コースなのだ!恐るべし北アルプス!しかしロープなどがあり、それに従っていれば落ちるような心配はなさそうだ(少し怖いけど)。
 
細い崖の道をすぎると、なんとか分岐点に到着!ここもちょっとした頂上のような感じで景色がいい!標高は2,600m超、360度のパノラマが楽しめる!白馬駅方面はまだ雲海に包まれている。ここも一つの目標地点である、眼下に広がる景色を楽しみながら腰をおろし少し休む・・・北側には唐松岳の山頂が見えた!
 
こちらが分岐点から見た唐松岳山頂・・・また登るのか(汗)。しかもせっかくここまで登ったのに一度下ってから上らないといけない(汗)。正直・・・しんどい(苦笑)!現在時刻は11時過ぎ、通常の人であれば10時半には山頂にいる時間だ。山頂まではあと30分くらいらしい・・・往復に1時間、そして昼食休憩などに1時間、下りで・・・。頂上までの登るペースを考えると結構際どい気がしてきた。ここも一つの目標地点だし・・・ここで諦めてもいいか、と思った。帰り時間を優先しなければならない都合もある(リフトが間に合わないと麓まで徒歩になる)。ツレとも話した結果それもアリということになった。
 
・・・しか~しッ!!!こんな頂上を目の前にして諦めるなんて・・・そんな選択肢あるか???と、急に諦めかけた自分にカツを入れたくなった!!!山頂を諦める前に昼食を諦めればいいじゃないか!と。たしかに1時間くらい通常ペースに遅れているが、その1時間は昼食タイムでちょうどツジツマが合うのだ!これは山頂を目指すべきである!そして帰り時刻が読める地点で余裕があれば昼食にしよう!と、ツレに説明をして意見は一致、山頂を目指すこととなった!なれば急げと井村屋のようかんでエネルギー補充し山頂へ!

 

 

 
山頂への道は分岐点手前ほど険しく無く、かつ危険な感じは少ないものの、頂上付近は急勾配と狭い道が続く。集中していて・・・この道中も画像は無い(汗)!なんとか目標へ向かい足を進める、足よ、前に行け!足元を見て一歩一歩を確かめるように歩く・・・その先には・・・
 
※画像は一部処理しています
 
・・・あッ、頂上!?!?しかし、どこか頂上かよく確認せず足元を見て一心不乱に登って来てしまったため、急に目の前に現れた山頂に感動する間も無かった。「あれ、もう山頂???」という感じだった(汗)。ツレは私のようなアホではなく山頂を意識し登ってきたのでとても喜んでいる!しまった、乗り遅れた・・・という感じで山頂標識の前に行き喜ぶツレの写真を撮ったりしていた。そこに他の登山者が笑顔で「写真、撮りましょうか?」と笑顔で声をかけてくれた。
 
ありがたい言葉に甘えることとし、山頂の標識と一緒にツレと撮影してもらう。撮影してくれたご夫婦もお返しに私が撮影をしたりしているうちに、この頂上が喜びと感動に包まれている事を強く感じた。そしてツレと一緒に達成した山頂までの道のりの達成感を、何故かここにいる人達全員と分かち合っているような気がしてくるのだ!
 
山頂からの360度の景色を見ていると、ジワジワと実感が湧いてくる。ああ、とうとう山頂まで来たんだな、と。ツレを励まし、自分はキツさをなるべく見せないようにして、でも後半は厳しさに負けそうな気持ちもあったここまでの道のり・・・これは山頂に来たその本人にしかわからない。同じ様にここにいる人それぞれがそれぞれの思いを秘めているが、それをみんなで共有しているような気分なのだ!「登ったぞ!!!」という共通のゴールに辿り着いた事で!
 
その証拠にもう一度見てほしい、上の画像の人々を。ほとんど背中を向けているのにその背中でわかるほどに、心が感動と達成感で満ち溢れているのだ。この興奮の集まった頂に立てば嫌でも感じてしまう!そして分かち合ってしまうのだ。
 

その強い達成感を感じながら山頂のパノラマを楽しむ。こちらは北(白馬岳方面)、手前側は北アルプスの難所、不帰嶮(からずのけん)だ。その山々を見下ろしているかのような景色だ。遠くには日本海らしき青いものと地平線も見える。何だか・・・地球を見下ろしている感じさえする!

 
こちらは山頂の360度パノラマ撮影。360度を見下ろす世界・・・これが山頂なのか。これは例えば高尾山では感じることはできない世界だろう。つまりは高尾山には高尾山の感動があり、山にはそれぞれの感動があるという事だ。ここで感じるものは唐松岳だけの感動であり、山にはそれぞれの個性があるのだ。だからみんないろんな山を登り、それぞれの感動を味わいたいのだ!
 
・・・この感動を、達成感をもっと頂上のみんな(仲間になった気分(笑))と味わいたいが、我々は鈍足のため短い間であったがそろそろ下り始めなければならない。
 
帰る前に・・・違う方向を。西には剣岳が見える・・・こちら側は富山県なのだ。帰り際に剣岳を撮影していると一人で登ってきたらしい女性に「写真、撮りましょうか?」と声をかけてもらった。もちろんYES!と撮影してもらい、女性も剱岳バックで撮影をしてお返しをした。この写真のとりっこ、今では自撮りなどすることも多いだろうが、これこそ山頂のコミュニケーション手段でもあり、かつ自分が撮ってもらいたいから先に人を撮ってあげる、という行動でもあるのだ。自分がやってほしい事を先に自分が人にする、なんとステキな行動なんだろう!これも山頂で味わった素晴らしい事だ!
 
・・・と名残惜しい山頂をあとにし、唐松岳山頂山荘に立ち寄り300円のトイレ休憩をした。トイレが300円???と思うかもしれないが、ここは標高2,600m超の世界なのである。水道も無ければ下水道も無い。流す水も少なければ汚水の処理も大変なことなのだ。特に今年は雨が少なく雨水の確保も厳しく、一般登山者向けの雨水販売も中止している山小屋が多いらしい(雨水でもあっても貴重なので有料)。
 
本来はこの山荘付近で昼食を考えていたがまずは下ることに。12時半頃山荘を出発、まずは丸山ケルンまで行こう、そこまで行けばあと2時間はかからずリフト乗り場にたどり着けるはずだ。
 
こちらは上りに撮影できなかった分岐点手前付近の画像。近くの子どもが「空を飛んでいるみたい!」と言っていたほど、両サイドが急な崖になっている。この怖いけど美しい景色を見ながら、丸山ケルンまで下って行ったのだ。
 
しかし下りは体力的にはだいぶ楽になる。だが重力が上りよりも強く足に伝わるのが良くわかる。太もも前あたりと足の裏への衝撃が強い。それを感じつつも丸山ケルンには13時半頃には着くことができた!
 
(その3へ続く)