毎年夏になると行われる「八王子祭り」は金、土、日の3日間で開催される八王子市の一大イベント。金曜、土曜の夜は駅近くを通る国道16号沿いの商店街の通りが数十件の夜店で埋め尽くされ、もっぱらこれが僕たちの目的だったりもする。金曜日は前夜祭、日曜日は昼間の国道16号を通行止めにしたパレード、そして僕らが行く花火大会は土曜日の夜といった感じだ。花火そのものはそこから少し離れた市民球場で打ち上げるのだが、まあ見物客の大半は自分だけの穴場スポットで花火を見ることが多いようだ。
みんなで花火大会に行く約束をした次の日、僕は今日も日差しの照りつける中を部活に出るために学校に向かっていた。今日も気温は35度超えの真夏日。なんかもう帰りたい…。
「サ~ワチ~ン、待って~、一緒に行こうよ~!」
声をかけられ後ろを見ると鷹野が小走りでやってきた。夏の太陽に照らされた白いブラウス、ショートカットの短い髪が走る風にふわっと揺れる様が良く似合う。「夏女」なんて表現が鷹野にはピッタリだ。
「今日も元気だね鷹野は。」
「なにそれ?私はいつだって元気いっぱいだよ!特に夏は私の季節!って感じでしょ?」
うん、自分でもよくわかってるようで。合流した僕たちはまた暑い道のりを歩き続ける。
「ねえ、サワチンは今日の前夜祭って行く予定あんの?」
「ああ八王子祭りのか?別に明日みんなで行くんだし、今日は特に考えてなかったけど。」
「それだったらさ、明日の下見も兼ねてさ、私と一緒にちょっと行ってみない?」
「………その誘い、上目遣いでもう少し照れた感じでモジモジしながら言ってみてくんねえか?」
ボスッ! 手に持ったバッグで尻を叩かれた。
「あははは!なーに面白いこと言ってんのよ!そんな事したらサワチン私にキュンてしちゃうよ?」
「はいはい。言っとくけど俺金無えからな、タカんなよ。」
「そんなん知ってるよ。大丈夫!私も大して持ってないから!」
何が大丈夫なのかはよくわからないのだが、まあそんなこんなで僕たちはいつものバカみたいなやり取りをしながら前夜祭に行く約束をして学校に向かっていった。
大人になった今こんな状況だったら5分でギブ、そして自販機にGO。
猫のパパ