保健室の扉をあける。当然中には誰もいない。ましてや美人の保健女医先生などもってのほかだ。
「あんた、なんか変なこと考えてるんじゃないんでしょうね。」
お前はエスパーか。ともかく2人は室内に入る。俺はとりあえず窓に近づき外を見た。空には星が瞬いている。彼女はと言うと何やら保健医の机をガサガサと漁りだした。
「お前の目的は保健医の財布か何かか?」
「あんたには関係ないでしょ。」
強い口調ではっきりと言いながら、どうやら財布ではない何かを探しているようだ。そして1枚の書類を見つけると机に向かいそれに何かを書きこもうとしていた。こいつ、一体何がしたいんだ。後ろからのぞきこもうとしたその刹那、彼女の後ろ蹴りが飛んできた。
「何見ようとしてんのよ!バカ!」
ったく、こいつは何なんだ。人の気も知らずにバカだの関係ないだの。さすがに頭にきた俺は、暴れる彼女から強引に書類を奪い取りそれを見た。どうやらこれは先日行われた身体測定の彼女の書類だった。書き込んでいた個所を見てみるとそれは「胸囲」、つまりはバストのサイズ。消した跡と見比べると5cmほど大きく改善されていた。
ちょっと見てはいけないものを見てしまった。「すまん」と謝りつつ書類を返そうとすると、彼女はポロポロと涙を流して泣いていた。
「……バカ…。…バカバカバカーーーーッ!!!」
迂闊な行動だった。まさかこいつがここまで取り乱すほど傷ついたとは。俺はただオロオロするばかりで気のきいた台詞も思いつかなかった。
「…なあ、勝手に見たのは悪かったよ。ごめんな。でもこんなリスクを冒してまでなんでこんな事したんだ?」
「……こんな事ぉ?こんな事ってなによ…?。わたしにとってこの事は、こんな事じゃ済まないくらい大きな事なんだからーっ!!このバカ!バカバカ!!」
そう言って俺の身体をたたきながら激しく怒り狂う彼女。そりゃまあ女子にとってはそうなのかも知れんが。男の俺にはよくわからない。
「だからって、こんな書類誰が見るわけでもないし、いいじゃねえかよ胸のサイズくらいどうだって。」
俺が言う。すると彼女は動きを止め、小さな声で呟いた。
「……んたが言うから…。」
「?」
「あんたが胸の大きい子が好きだなんて言うからじゃない!…わかってるわよ、こんなことしたって何にもならない事くらい…。…でも、わたしは…わたしは少しでもあんたの…、あんたの好みの女の子になりたくって…でもどうしたらいいのかわかんなくって…結局こんなことしか思い浮かばなくって…。」
それは思いがけない言葉だった。今俺の胸の中で泣いている彼女。その彼女が俺の為にこんな馬鹿げた事を。そんな彼女を傷つけた俺の迂闊で愚かな行動や暴言。色々な思いが頭の中をぐるぐると回っていた。
「……んでやる…。」
今度はなんだ !?
「もう知らない!こんなことまで知られて!こんなみじめな思いするくらいなら死んでやる!」
そう言うと彼女は保健室を出て行った。俺も続けて後を追う。彼女は階段を駆け上り屋上へと向かって行った。
→TO BE CONTINUED…
多分次で完結すると思う。
猫のパパ