母の足がむくみ始めた。足がパンパンになり癌研に電話をした。電話での問い合わせでも当たり前だがお金を請求される。金額がいくらとかが問題ではなく、私たち家族の一大事をビジネス感覚で受け捉えられた感じがなんとも言えなかった。


もう母の身体は癌が進んでおり機能していない。


母が家にいる間のほとんどをベッドで過ごすようになった。リビングでは父が北の国からのDVDを借りてきていた。私も大好きな作品だ。母がベッドで横になっており私は洗濯物を畳みながらDVDを見ていた。

タイミングが悪く、ホタルとジュンの母親が亡くなるシーンだった。

なんでこのタイミングで。。。。

でも今見るのをやめたら母が気にするかもしれない。涙が溢れてきたけど母から見えないようにするので一生懸命だった。


母の希望で家系代々のお墓を家の近くにすることにしたが、父にしてはとてもストレスのかかる出来事だっただろう。父が家に帰ってきた時に理不尽なことで口論になり、よく覚えていないが持ち帰りの焼きそばがリビング中にぶちまけられた事がある。私か父かどちらがしたのかはもう思い出せないが、父が怒って出て行ったあと母が

「あなたはとっても大人になったわね。」

と言ってくれた。


母が少しでも心配しないために

そんなの当たり前だよ!みたいな感じで返したがもう母には何も心配かけたくなかった。だってもう自分のことできっとめちゃくちゃ大変だったから。



しばらくすると、


「ママね、ホスピスに行くことにしたんだ。何かと安心でしょ。」

母がそう言った。


母が出て行った時、もうこの家には今の姿で戻ってくる事はないんだと思った。