籠の中の乙女 | JINのブログ

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映画好きです(ネタバレ注意!)
きままにいろいろ…

ヨルゴス・ランティモス監督作品としては、「女王陛下のお気に入り」

よりも、こちらの方がむき出しの怖さがあるかも

ケーブルでやっているのをたまたま観て、なんなの?この世界?

と震撼した作品です

 

●ネタバレありますので、ご注意下さい

 

 

 

大きな工場を経営している社長の父親と母親、長女、次女、長男

の一見普通に見える5人家族のお話です

しかし、この父親は専制的に家族を支配しており、子供達は

名前もなく、いっさいの外出を禁じられ、一般社会から隔絶した

生活を送っている

父親が決めた謎のルールに従い、庭には「猫」という恐ろしい獣が

いる、などと脅され、信じ込んでいる子供達

やがて父親は、妻では飽き足らず、金で若い女性を家に連れ込む

外部の人間に接触して、子供達に波紋が広がっていく

長女は、セックスを使っての交換を思いつき、女性からビデオを

手に入れ、外の世界の一部を垣間見る

次第に外へ出たい思いをつのらせる長女、彼女はついに…

 

ランティモス監督は、「支配と服従」に興味があるんですね

「女王陛下のお気に入り」では、女王、この作品では父親が

絶対的な支配者です

女王は気弱で不安げな所がありましたが、この父親は、まったく

迷いのない帝王

子供たちは、彼の所有物、妻は言うなりの隷従者

彼の中では、このような家庭の在り方が、ごく自然であるようで

罪悪感さえ感じられないのが、淡々と怖いです

サイコパスは、外面装うのが上手で、よく社会的に高い地位にいたり

するらしいですが、たぶんそんな感じ 

 

異常が異常とされない世界

新興宗教の教祖みたいなものですね

隔絶した世界を作り、教祖である父を崇め、逆らうことは許されない

生まれた時から、それしか知らなければ、何が真実か正しいか

わかるはずもない

それでも、外部の人間に触れれば、外への興味がつのる

そんな環境でも、人の自然な成長は、止められないものですね

長女は、父のルールを破り、殴られる

彼女は本当に大胆にも、父の車のトランクに忍び込み、脱出を

試みます

とうとう家の門から出て、外に置かれた車

しかし、そのトランクが開くこともなく、映画は終わっていきます

 

……えぇ~、彼女どうなったの?

発見されて連れ戻されたなら、かわいそうだけどまだマシ

盲点でそのままトランクを開けない場合もありえるとしたら…

答えのない、行き場のない後味がずっと残ります

 

家族だけの祝いの席で、姉妹が踊るヘンテコな踊り

目に焼き付きます

監督は「女王陛下」でも貴族たちに変な踊りをさせたり、裸の男に

果物をぶつけてべたべたにする悪趣味な遊びをしているシーンを

入れたり、どこか感覚がシュールなんですね

ギリシャ出身だそうですが、この監督、いったいどんな家庭でどう

育ったのか、興味をそそられます

 

子供へのこの扱い方、虐待、ちょっと話題のカバールの匂いもする

カバールの家系の子育ては、自分の子供でもわざと性的に破壊して

支配し、コントロールするらしいので…

この映画の父親のように、リアルでも世の中には、私たちに隠された

想像を超えた悪魔がいるという話も信じてしまいそうです

子役だったマコーレー・カルキン君が、ハリウッドのお偉方から

性行為を促された時に、それが「まったく特別なことではなく

当たり前のよう」だったと語ってる映像を見ましたが

それが悪いことの自覚さえなく日常化している世界って…

ハリウッド映画は好きではあるけれど、大人が枕営業するのは

本人の意思次第なんだし自由だと思いますが、子供まで手を出して

それが常態化しているなら、もう終わってもいいと思います

 

脱線してしまいました

ヨルゴス・ランティモス監督、不思議な持ち味の才能を感じさせます

機会があったら、観てみてください