大人気漫画、平野耕太先生「ヘルシング」
「私は戦争が好きだ」の演説で有名な「少佐(モンティナマックス)」の魅力はなんといっても「私は私だ」という吸血鬼の血を拒絶するほどの超人的自我だろう。
「人間は 魂の 心の 意思の 生き物」というセリフのまま、徹頭徹尾己の思うがまま、欲望のまま、生きた。
「アーカードを倒す」という目的を達成するためなら戦争という手段すら厭わず(*というか戦争もしたかったんだろう)、
どれほど他者を踏みにじっても屁とも思わない。
後悔だの罪悪感だのとは無縁でひたすら己の思うがままにカリスマと頭脳を駆使して驀進する「強さ」は男だったら憧れざるを得ない。
少佐とは真逆なのがペンウッド卿で、どもりでびくびくオタオタしており、インテグラからもいじられまくっている。
魔人、超人、狂人だらけの「HELLSING]という漫画において我々読者よりの「フツー枠」の人である。
だからこそ無能で、臆病「かもしれないが」に、読者は感情移入し、やせ我慢をして「卑怯者にならず」勇気をふりしぼって「義務を果たす」その美しさに心を震わせるのだ。
自我のままに生きるのは男の願望であり憧れだが、「こえー」とか「逃げたい」「死にたくない」とかそういった思いや欲望のままに生きるのではなく「あらねばならぬ」という「課せられた義務」に殉じるのまた、男の憧れる「カッコよさ」なのだ。
所詮、平々凡々な我々だが「ひきょう者にならない生き方」はできる。
仲間で超人枠のアイランズ達に「俺達のともだち」といわしめ、「裏切るくらいなら死んでしまう」と称えられる。
「頼みごとをすればウンと言ってくれる」と友人に評される男が「そんな頼みはきけない」と言って爆薬のスイッチを押す・・・。
そんな、凡夫であるわれらに勇気を与えてくれるからペンウッド卿だから「世界一カッコいい無能」として読者に称えられ、その心を掴んで離さないのだナァ。