「ONE PIECE FILM RED」の谷口悟朗監督の作品である。

谷口監督の紹介文で「コードギアスの」と枕がつくと「”ガン×ソードの”やろ?(真顔)」と主張する熱烈なファンは必ずいる(た)。 

実際「創作における復讐」が語られると、必ず誰かが挙げる作品であり、それは、主人公(ヴァン)が徹頭徹尾、「復讐心に生きて仇討ちを完遂する」話だからである。 

 

ヴァンは「お前をぶっ殺しに来たんだ」と明確に殺意を示し、仇であり「世直し」をしようとしているラスボスが大義を語ろうと全く完全に聞かず「てめぇぇ、死ィねぇぇぇ」としか言わない。

正しく復讐者の鏡である。 

また、ネットスラングの「童帝」は彼のセリフが語源である。

複数の美少女sに惚れられて告白されようが「俺は童貞だ(*俺の貞操は殺された婚約者に捧げたから死ぬまで守るの意)」と言って断る。

美女の誘惑に「悪いな。俺童貞なんだ。お前に俺の純潔は渡せねえ」と断るなど、ヴァンはまさしく「童帝」という言葉にふさわしい男の中の漢といえよう。

ガン×ソードの魅力はこのヴァンにあると言っても過言ではないが、もう一人の復讐者、レイ=ラングレンも見逃せない。

 黙っていれば知的な美形で妻を殺されるまでは弟想いの優しい性格だったが、仇と出会った際に見せる狂気の表情は、ヴァンと共に「オリジナル笑顔」というネットスラングの語源となった。

 

レイはヴァンの「ガンマンのような侍」に対し「侍のようなガンマン」というヴィジュアル面でも意図して対比的に描かれおり、「周囲を巻き込むことを厭わない(*植物園で自爆しようとする)/街が壊れることが分かっていても躊躇しない)「敵なら子どもでも容赦なく殺す」など、その行動は「復讐鬼」と呼ぶにふさわしく、「エレナ(婚約者)の名誉を汚すことになる」ため、無益な殺生はしないなど美学を持って行動をするヴァンとは、「どちらが仇を殺すか」以外でも何度も対立する。 

ゆえに、そのレイがヴァンとは別の形で本懐を遂げ、復讐から解放された優しい兄の表情に戻って死んでいくシーンは、涙なしには見ることができないのである(*弟のジョシュを演じた野田順子氏の「兄さん!」の絶叫の演技も白眉)

勿論レイが「本懐を遂げる」シーンは、視聴者が見ていて力が入ってしまうほど「やった・・・」という思いにさせてくれる。

 

ヴァンとレイの「仇」である「かぎ爪の男」は、やることは外道だが「無垢」「本気で人々を救うために世直しをしようとしている」「信奉者がめちゃ多い」など、FILM REDのウタと共通点が多い。 谷口作品に興味を持った方は、UTAの原型という視点で見てみると、またおもしろいのではないか。