今年に入ってから仕事が物凄く忙しいのだ><
そうすると、字幕のドラマが見られないので、粗筋を知っているドラマを見直す感じになっている(苦笑)なので旧知の横溝正史のシリーズを映画・ドラマ・果てはオーディブルとかで流しっぱなしにしている。
実は昨年作られたこのドラマはオンエアで見ていた。
『犬神家の一族』は昭和の角川映画の第1発目として大々的にPRもされて多分1番メジャーな作品だと思われる。今なぜ、これを脚本:小林靖子さんでドラマにするのか_と思っていた。
小林靖子さんは戦隊ヒーロードラマが好きで、OLだった頃に自分で描いた脚本をテレビ朝日の「ご意見・ご感想」コーナーに送ったものが、当時のメインライターの目に止まって脚本家になったという面白い経歴をお持ちの方。私は「ウィッチブレード(2006)」と「侍戦隊シンケンジャー(2009)」で彼女という脚本家に惚れ込んでしまった
特撮畑からNHKの岸部露伴シリーズを書き始めて、いつか小林さんが大河書いたりしないかな_とそんなことを考えています。
彼女が書いた犬神家ということで_期待してみたのですが、オンエアの時は正直『これじゃない』感がして、あまり多くの感想を書きませんでした。
ところが、今回見直してみたら全く違う感想を持ちました。
軸は大竹しのぶが演じるスケキヨ(白いマスクの怪人)くんのママ松子。犬神家の登場人物で要なのはこの松子で、歴代:沢村貞子、高峰三枝子、京マチ子、岡田茉莉子、栗原小巻、三田佳子、藤純子と昭和の大女優のオンパレードです。満を持して大竹しのぶ登場
(ここからネタバレします)
松子は大富豪の愛人の娘(それも第一子)として生まれたのだが、両親からの愛情ももらえず母親違いの姉妹とは常に些細なことで軋轢のある複雑な家庭で育っている。一人の息子スケキヨに対する偏愛は重く、彼の為なら自分の手を汚すことなど厭うこともない。傲岸で不遜な婦人だ。
戦地から引き揚げてきた息子は顔に大きな傷を負っており、心にも影を落としているのか、元来の明るさは微塵もなくなっていた。そんなスケキヨを不憫に思い松子は彼を抱え込むようにして周囲から守ろうとする。この辺は歴代ドラマと流れはあまり変わらない。
このドラマで大きく違うのは、途中から自分が庇っているのはスケキヨではなく腹違いの弟:静馬ではないかという疑念が沸き上がってきてからだ。松子は静馬かも知れないと思いつつも、母親の本能のように弱っている息子に愛情を覚える。そして静馬も自分に愛情を注ぐ松子に、母親を感じていくのだ。このことが、他の『犬神家の一族』とドラマを違うものにしていく。
事象は変わらない。佐竹の首が菊人形から転がり落ち、佐智が首に琴糸を巻かれて死んでおり、仮面の男が湖に頭から突き刺さる。実行犯は松子で、隠ぺい工作をするのはスケキヨと静馬。
隠ぺい工作を唆し、自分を相続人とするために殺人を繰り返す母をかばう母親思いの息子佐清。。。
だが、最後の最後にどんでん返しがくる。事件が終結したが、今一つ腑に落ちない金田一耕助が収監されている佐清に会いに来る。
金田一はこの一連の殺人事件は、全て佐清が意図したものではないかと尋ねる
佐清と珠代は徴兵前から愛し合っており、愛憎渦巻く犬神家から抜け出したいと思っていた
そこに戦場で自分と瓜二つの叔父:静馬と出会い、そこからこの連続殺人事件を構想していたのではないかと問いかけます
静馬はそれを否定し席を立ちます。
最後に泥のように深い母親の愛情を断ち切った佐清と彼の帰りを待つ小夜子が映し出されます。
『好青年ではない佐清』が怖かったです。
泥のような深くて温かくて抜け出したいのに絡みついてくる母親の愛情とか演じたら大竹しのぶ以外に考えられないなぁ。。。昔から怖い女優さんでしたが、一段と磨きがかかって怖くなっています。
改めて見直すと脚本の意図が見えてきたように思います。
オススメ度:w