#ギイタクパラレル



この人は何を持っているのだろう?


ひどく渇きが癒される


潤い満ちる…


だからか

とても一緒にいたい。


身分不相応なのは分かっているから、

出来る限りでいい

いられる間だけ

目一杯


近くにいたい。

それこそ肌が触れ合うくらいに。



あなたが頬杖をついて、尋ねた。

「そろそろ名前を聞いてもいいかな」


「…くみ」


あなたが目を丸くする。

「くみちゃん。やや女の子のような名前ですが。女の子なのですか?」


「あんた初めに全部脱がしただろ⁈見ただろ⁈」


クックッと笑いを噛み殺して、あなたは目の端に涙まで浮かべている。

「そんな乱暴な言葉を使うのは、女の子じゃありませんねぇ」


「た、く…たく、です」


あなたは軽く会釈した。

上品な仕草が似合う。

「私は崎と申します」


「サキ?あなたこそ女性の名前じゃないですか」


「これは失礼しました。

 姓ですよ、崎は。名前は呼んでくれないでしょう?」


確かに。


あなたが含みを持って笑う。

「睦み事の際に呼んで下さるなら、教えます」


「…結構です。まだ私にどうこうしたいのですか」


あなたの目が色めく。

「そりゃあ。

 好きな子には触れたいでしょう」


「…あなた女性は好きじゃないのですか?」

男に触って何が楽しいのだろう。

僕だって、触るなら女の子がいい。


…あなた以外なら、だけど。


あなたは柔らかく笑む。

「好きですよ。普段なら。

 でもきみ…タクに限っては、タクがいいので」


「どうしてでしょうか」

僕にはこの人が必要だけど、この人に僕が必要な意味が分からない。


「どうして…さあ。

 あなたといるのが、何かとても良いのですよ。

 何がか、は分かりませんが」


僕もです。

と言いたかったし、彼もそれを望んでいるかに見えたけれど

言わなかった。


僕は、楽しいこととか、嬉しいことに慣れていないので、いきなりハッピー、になったら、それは人生の終わりじゃないかと思うのだ。


ハッピーエンド。


それから王子様とお姫様はいつまでも幸せに暮らしました。

なんて嘘。

だってその瞬間が幸せなら、次の瞬間には、そのボルテージはいくらか下がっているはず。


ならば、最高潮で終わらせたくないか?


そして何度もその絶頂を思い返すのだ。


ああ、幸せだったな、と。


それが最高の人生と思う。

少なくとも僕は、そんな嬉しい事があったら、その場で死にたい。

めちゃくちゃ幸せなまま

微笑みながら最期にしたい。


「タク?どうかしましたか?」


「…いえ」


この大好きでたまらない人に、きみしかいない、と言われたい。


どれだけ幸せだろう。


好きな人に、自分しかいないなんて言われたら。



僕に陽は差さない。でも

太陽のあなたなら、あなた自身が輝いてるから

隣にいれば僕もいくらか照らされて

明るくなれる気がするんだ。


好き

大好き


「ねぇ、セックスしましょう?」

あなたの近くにいたい。

隔たるもの失くして

ひとつになって


快楽に溶けたい…


僕は

たまらなく、あなたが好きです。