#ギイタクif少女



また、きみの不機嫌な日はやってくる。


ある意味健康なんだよね。

これだけ定期に身体が循環してるのは。


きみの葛藤は助けてあげられないから、せめて痛いところをさすってあげる。


最近きみはそれを気に入ってくれたらしく、「不機嫌な日」にもオレに会う。


擦り寄って

「お腹痛い」

甘える。


「よしよし。他に痛いとこないの?」

お腹をさすりながら聞くけど、きみは「うーん」と考えて

「友達は腰痛いとか、頭痛いとか言うけど、あたしはお腹だけだな」

「それ全部なら、オレ手がもう一本ないと間に合わない」


きみは吹き出した。

「何もかも行き届かなくてもいいじゃない」


いや

何も出来ないからさ、そのくらいしてあげたいよ。


セックス出来るなら、うんと優しく甘やかしてあげるのに。


オレがきみをどんだけ好きか、伝わるのに。


きみに温かい飲み物を持ってきて、きみが、ありがと、って両手で受け取る。


少しネコ舌だから、唇を当てて大体の温度を確認してるのが可愛い。


テーブルの陰で、オレはきみのお腹に手を当てる。


幸いオレの手のひらは温かいらしく、きみは気持ちいいと言う。


「あれ、タクミぃ」

きみと同じ制服の女の子が、きみの横に立った。


隠す間も無く、友達の目はオレの手にゆく。

「え、何、タクミデキたの?」

今考えれば、何て配慮のない言葉だろう。


何もやましくなかったオレらは何の動揺もしなかったけど。


きみが答える。

「あんま、あたしがお腹痛い痛いゆうから、ナデナデしてくれてた。かれぴ優しでしょ」


友達は笑った。

「なあんだ。びっくりした。

 ノロケられちゃったよ、あーあ、じゃあね」


友達が去ったのを見て、きみはため息をついた。

「ごめんね。友達があんな」


「いや、いいよ平気」

それより、付き合ってたらそういうこともあるんだな。

もし…いや、ないけど、妊娠させたらどうなるんだろ。

結婚とか、高校生では無いけど、でもこの先、別れる選択とか少なくともオレにはないし、ずーっと付き合ってたら、考えてくれるのかな。


オレはきみを横目で見る。

「タクミちゃん、あのさ」


きみは温かいドリンクから口を離した。

「ん?」


「さっきの話だけど…妊娠させる気はないけど、その、この先…」


「きゃっ」

きみが、椅子から腰を浮かす。


「え?何」


きみは、バッグの中をゴソゴソした。

「なんか、ないかな」


「え、どうしたの」


きみは、言いづらそうに、椅子を見る。

「多分血がついた…」

聞き取れないくらいの小さな声で。


オレは制服を脱いで、下に着てたベストをきみに着せて、多分これでスカートは隠せる。


脱いだ制服で椅子の上を拭いた。


きみはびっくりしていた。

「制服汚れるよ!」

「いいから」


確かに血液は付いてて、一度では取れなかったから、コップの水をきみが椅子の上に流して、そのあとをオレが再度ぬぐった。


きみが心配そうにオレの制服を眺める。

「あたし、手洗いしてからクリーニング持ってく。ごめんね、汚して。

その、…汚いのに」


「汚くないでしょ。

 オレがケガしたら、きっとタクミちゃん、自分の何かで手当てしようとするよね?」


「ケガの血とは違うし。

 あ、ベスト汚す前に早く着替えなきゃ」


「ここからなら、ウチが近いよ」


「落ち着かないから、ウチ帰る」


そう


そうだよね。


家族が冷たいから、って言っても

きみの家はまだ

「そこ」

なんだ。


オレは家族じゃないんだよね


それが


当たり前なのに


なんだか今日は、とても淋しい…