#ギイタクif少女




また、きみの機嫌が悪い日がきた。


結構頻繁。


きみは眉をしかめて、

「お腹痛い…」

つぶやく。


ラクにならないかな、とお腹に手を当ててさすったら、きみが顔を上げた。

「あ、ありがと」

オレの手の甲に自分の手のひらを重ねる。

「毎月やだ」


きみの言葉でやっと分かった。

「あ、ごめん。生理なんだ?

 言っていいよ。動き回らないようにしよう?

 ウチくる?ゆっくりしてたらいい」


きみは首を振った。

「お腹痛いのは平気」


?じゃあ何がそんなに機嫌悪いの?

あ、イライラする人もいるよね。

何だっけ、PMS?

あれ?でもあれは生理前だっけか?


きみが眉をしかめる。

「毎月、お前は女なんだぞ、って確認されてるみたいで、やだ」


「?タクミちゃん、女の子なの嫌なの?」


きみは目を見開いた。


それから無言になった。


悪いこと聞いたのかな。


きみはうつむいて、前髪で目元を隠した。

「嫌なわけじゃない。

 だけど、別に好き好んで女に生まれたわけでもない」


?まぁそれはそうだろうけど。


「何でか、女だってせいで昔からよく責められて。


 母は、兄があたしを可愛がるのが面白くなかったみたいだし…母は兄を溺愛してたから、あたしが母から兄を盗ったって。子供みたい。


 兄は兄で、異様なくらいあたしに執着して、小さなあたしを触りたがって、やだって言えるくらいの歳になったら、急に冷たくなった。


 でも大人の身体には興味ないみたいで、あたしが中学くらいから無関心になった。

 …変なの」

ロリコンだよね、ときみは自嘲してつぶやいた。


オレにしたら、大人の身体になったきみに兄貴が何かしなくなって良かった、なんだけど。

きみは違うの?


「嫌だったんだけど、兄はあたしに優しかったから、急に無関心になられて、始め訳わからなくて、後からやっと、ああ、幼児の身体が好きだっただけか、って」

きみが、膝に顔を埋める。

「あたしを好きだったわけじゃないんだな、って。

 母は、もうすでに、あたしを嫌ってたし、兄があたしから離れても、それは変わらなくて、あたしは家に家族がいなかった」


きみが顔をずらしてオレを見る。

きみは、カラコンを止めてて、真っ黒な瞳でオレを見詰めた。

「兄に、小さい頃、なんでこんなことするの?って泣きながらきいた。

 兄は、お前が女だから悪いんだろ、って」


きみの目から涙がこぼれる。

「あたしが悪いの?

 別に女になんかなりたくなかったよ?

 兄は変なことするし、母はあたしを嫌うし、何もいいことない。でも…」


涙をぬぐったオレの手をきみは握りしめた。

「でも、ギイを好きだから、そこだけは女の子で良かったのかな」


きみは、小さく

「でもあたし、あたしの身体嫌い」

とつぶやいた。


だから

あたしの嫌いなものに

あなたが触るの嫌なの。


ごめんね