#ギイタク

2nd




その距離を競うより


どう飛んだか


どこを飛んだのか


それを…




だからね


いつまで生きるかじゃなくて


あなたとどう生きて


何で笑って、泣いて


どれだけ幸せだったか


虹のアーチを渡る時に胸を張っていられるように


精一杯、あなたと幸せでいようって


そう毎日思うんだ…




手のひらを空へ向けると

隙間から水色が見える。


ああ

今日も、空は僕の上にあるね。

まだ、そこへは行けないよ。


まだまだ沢山、

きみに好きだって伝えてない

まだまだ足りないんだよ

もっともっと

ねぇ

どうやって伝えよう?



「ただいま。託生」

この時期、ギイは玄関で服をはらって目には見えない何かを落としている。


僕は花粉症じゃないよ、って言ってるんだけど

「でも何となく」

だって。


今日は何の花が咲いてたのかな。


じっと見てたら、ギイが照れた。

「何、託生」


「ううん。今日もカッコいいね」


ギイが近寄って来て僕の頬にチュッとキスする。

「託生も可愛いよ」


うん。

今日は体調がまあまあかな。

悪いとね、ブスになっちゃうからね。


「花粉ひどいの?

 今日ベランダから黄色いぽやぽやが見えた。

 菜の花咲いた?」


「花粉すごいんだろうなぁ。

 職場皆んな辛そうで。

 菜の花咲いたよ。週末見に行こう?」


僕はうなずく。


優しい恋人は、結婚もせずに僕といてくれる。


僕は病気をいいことにギイを自分に繋ぎ止めている。


いつ僕の人生は幕を閉じるか分からないけれど、意外と普通に日常を送れているんだ。

それももう何年も。


薬は手放せないし、副作用は決して楽ではないけど。


それでもギイといられる。


身体がしんどくても、何より嬉しい。


ギイはことある毎に僕に触れたがって、でも僕は怖くて、一度だけ最後までしたけど、その後生きた心地しなくて、それ見たギイがさすがに止めた。


それでも二日と明けず僕に触ってくるんだけど。


…気持ち良くしてもらっちゃうんだけど。


「託生」

ほらまたギイの唇が、舌が


…気持ちいい



愛してるよ

愛してる


自由に触れ合えなくてごめんね


でも繋がってるから


思うように出来ないけど

ちゃんと繋がってると思うから


ギイ


もう身体は繋げられないけど。


僕の心はギイの中にあるし

ギイも僕の中にいるよ…