#創作BL
一雨ごとに
まとわりついて締め付ける暑さが
遠退きます。
秋が、やってきます。
柔らく抱きしめるような、撫でるような
あなたとよく似た
…あなたと出会った季節です。
ソファに座る朔也の膝に、羅奈が甘えてくる。
「お彼岸だよ朔也あ」
朔也は、羅奈のネコ毛を撫でた。
「おはぎでも食べたい?」
「おはぎ…お墓参りしたい」
墓?誰かこいつ、身内死んだっけな?
まぁ…産んだだけの母親は亡くなってるけど。
さほど思い入れがあるとは思えない。
「?誰の」
「誰かいないかな」
…お墓参りがしたくて
参りたい人はいない、という。
おかしな話。
でも、実の母親、とか、墓がないでは無い。
あんまり行きたくないだろうけど。
羅奈が独特の自分ワールドな目をする。
「昔の自分?かな。
今からなら行ってあげて、朔也がいるから、大丈夫だよ、て言ってあげたい」
「そう」
死んでるのか。
こいつの過去は。
羅奈が朔也の膝に頭を甘えてもたれさせる。
「うん。マイノリティに辛くて、怖がってる俺に、会いに」
羅奈が、遠くを指差す。
「あの子は、まだあっちにいて、俺はもうこっちにいるから」
お彼岸、て
生きている世界の
あちら、と、こちら。
川越しに会えるのかな?
「一人で心細くて泣いてるだろうから。
行ってあげたいな」
「世界一幸せな花嫁さんになるからな、って言ってやれ」
「うん」
「やだな、否定しろよ、照れるだろ」
羅奈が膝で立って朔也にキスする。
「本当だもん」
生きている者と、そうでない者
川の、あちらと、こちら
あっちに行ったら毎日お前といられないから
俺が耐えらんないから
ごめん、そん時は連れてくな。
「羅ぁ奈」
「ん?」
「死んでも一緒いていいよな」
「もちろん一緒いる」
じゃ、連れてこ
まずは、先にあっちに行った人に聞いてみますかね。
『そちらは、どうですか?』
こいつと、今みたいに過ごせそうな
幸せな場所ですか?
なぁ?小此木エリさん?