#ギイタクパラレル




穴だらけのきみを、少しでも埋めてあげたくて


それは自分本意な、


…おこがましい思い上がりだったけど…




「ギイには、分かんないよ」

冷たい顔で、託生が言う。


自嘲した顔で。

まつ毛を伏せる。

「分かんない。

 された人じゃなきゃ」


そして挑戦的にオレを見上げる。

「兄貴に組み敷かれて、犯されながら、

 本当は気持ちいいんだろ?

 感じてんだろ?

 やらしいな、淫乱

 てさ、まだ『それ』が何かも知らない子供の頃からだよ?

 恐怖と自己否定以外の、何だっての」


託生がオレを横目で睨んで、すい、と逸らす。

「…責任も取れないくせに、手を差し伸べないで」


その横顔は、少し寂しそう。

「温もりは、一度味わうと、辛い…」


そんな


寂しそうな顔して言わないで。


抱きしめて、離せなくなる。




綺麗なきみだけが


スローモーションで笑い掛け


耐えきれない程の


後悔の波が押し寄せる…



どうしてきみを救えるのが、オレじゃなくて、きみを痛めつけた兄貴なんだろう?



ねぇ

許されたい


許されたい


何で兄にあんなことされたのか


自分に何か悪いところがあったのか


許して


兄さん…


抱きしめて

『タクミは悪くないよ』

って


呪縛から解き放ってくれるのは、


呪った兄さん


あなただけだ。




「やだ、ギイ止めて」


「何で。

 ちっとも汚いことじゃないんだ、って

 これは、愛してる、って事なんだ、って伝えたいのに」


きみが手で顔を隠す。

「やだ…セックス好きなのバレる。

 ギイには知られたくない見られたくない」


「好きでいいじゃないか。

 恋人がエロくて嬉しくないカレシいるか?」


託生が、首を振る。

「違う。

 …僕は、きっと誰にでも感じる。

 好きじゃない人にでも。

 身体が、されたくて、されたくて、たまらなくなってる。

 正直きみのも欲しい。

 けど、きみだから欲しいのか、自信ない」


「…待ってろ。

 オレじゃなきゃ、ダメにしてやる」


それは、容易いと思ってた。


気持ちの伴わないセックスなんて、大したことないって。


だから、託生を愛している自分だけが、それを教えられる、って。



でも


託生のキズは、思いの外深かった。


感情と切り離されたセックス。


切り離さないと、


正気保て無かったんだよな。




まさか


託生自身が望んでいたなんて。


兄貴を本気で愛していたなんて。


…自分でも信じたくなかったのは当然だ。



それは


『罪』と


されるのだから。



でも?


兄弟だから、とか


同性だから、とか


カテゴリーでオレらは恋する訳にはゆかない。




あくまでも


好きになった人が


好きな人だ。




「やだ、止めて、止めてギイ」


「止めない。

 好きな子抱かずにいられるかよ」


「やだ…」


気付け


気付け


これが『好き』って事だよ託生。


なあ


オレが一番託生を愛せるんだよ。


分かってよ


分かって


頼むから


お願いだから




ああ


どうして今日も届かない


お前は、兄貴に恋したまま


身体だけオレに委ねる。



悲しい


恋。



兄貴


早く、この呪いから託生を解放してやってくれよ。