#ギイタクパラレル

両性具有



駆け出したら、


手に出来ると言って。


いざなうのは、


遠い遠いあの声…





山桜桃の下で、琉惺がぽろぽろと涙をこぼす。


山桜桃は、進めていた身体を止めた。


充分に慣らしはしたけど、女の子とするのと比べたら、違和感は半端ないと思うから。


今日のところは、止めておくかな。

「琉惺、痛いの?止める?」


琉惺が、腕で顔を隠して首を振る。

「ちが、

 山桜桃、どうして」


「?どうして?」


琉惺が腕の隙間から山桜桃を見上げた。

「どうしてこんなに寂しいのに、ひとりで生きて来たの?

 こんなにひとり、嫌いなのに」


何を突然言われるんだろう?

「え」


琉惺の腕が伸ばされて、山桜桃を引き寄せる。

「もっと奥まできて…

 抱きしめてるから。一緒いるから。

 山桜桃、一人でいちゃ駄目」


山桜桃は、琉惺の言っている意味がよく分からない。

「え」


琉惺の涙は止まらない。

「悲しい…。

 山桜桃が、拓さんいなくて寂しい悲しい

 って、

 流れ込んでくる」


「何、琉惺」


「たくさんして。

 俺が埋める。

 埋めるから」


拓が、いなくて寂しい…


何、そんな当たり前のこと


いや、でも、琉惺から何でこのタイミングで言われるんだ?


琉惺が首を傾げる。

「山桜桃、無意識?

 手が、拓さんを探してるよ。

 拓さんを抱きしめたくて、…俺じゃない身体、探してる」


「そんなことない。

 ちゃんと琉惺を抱いてるよ」


「悲しい…」


「何で、琉惺が泣くの」


「山桜桃が、泣かないから!」


そう、だっけ?

泣いたと思うけど。

拓を想って、何度も。


言われたら、山桜桃の目から涙がぱたりと落ちた。

「あれ…」

自分に、驚く山桜桃。


頬に琉惺の手が伸びる。

「ほら、悲しんで?

 悲しいから、俺に一緒にいて、って言って?

 俺は、いるから。

 山桜桃置いていかないから。

 行くなら山桜桃も連れて行く」


「あ、うん…」


抱きしめた、琉惺から感じたのは、深い深い母性で。


琉惺が、性別が分からないと言うのも、分かる気がした。




眩し過ぎた、あなたの手を握って。


求めるほど


青い青いあの空…




琉惺が、山桜桃を抱きしめる。

「俺が、山桜桃守るから」


「うん…」


「幸せ、って思えるようにするから」


「うん」




突き抜けたら


見つかると知って


振り切るほど


青い青いあの空。




ね、拓


拓とは幸せを一緒に作ったよね。


またね、幸せを運んできてくれる、って言ってくれる子が出来た。


綺麗な


青い鳥だよ


空よりも、深い青の鳥だよ。



オレもう一度、


幸せになるね?







             Blue bird Fin

song by
ブルーバード
いきものがかり