#ギイタクパラレル

両性具有




山桜桃の手が、自分に触れた。


指先から、手のひらから、好きが、優しさが、自分への大切さが伝わって。


琉惺は、ガチガチに緊張してたんだけど


触られて


正直嬉しかった。


拓の気持ちが分かった。


…触られたい。


それ以上、もっと


セックスしたい…。





服を整えてくれて、キスしてくれて、抱きしめてくれた山桜桃を


琉惺は、また


更に好きになってしまって。


琉惺は泣きそうに


どうしたらいいか考えてた。


「ゆ、すら」


「んー?」


拓にどうしてたんだろう。


あの大きな手のひらで、触られて、それで…

どうしたの?


自分にもして欲しい。


自分にも拓と同じこと…


「あ、いや」


違う


これは、ただの嫉妬だ。


拓と張り合ってどうする。


こんなに山桜桃が、大好きな拓と比べるなんて。




山桜桃が心配そうに琉惺を覗き込んだ。

「大丈夫?嫌だった?」


琉惺は首を振る。

「ごめんなさい。焼きもち妬いてた」


「焼きもち…」


琉惺が山桜桃を見上げる。

「拓さんには、したんだ。って。

 うらやましくなった…。

 ね、セックスて、痛い?

 俺には出来ない?

 …やだ、ごめんね、やっぱ張り合ってる」


「触られて嫌じゃなかったの?」


琉惺が、ふるふると頭を振る。

「…嫌になったのは…

 山桜桃が、拓さんとしてるの想像したから」


山桜桃が笑う。

「そっちの嫌?」


「うん。嫌。

 拓さんが、山桜桃としたかったの分かる。

 触られたいよね。

 好きだったからだね。

 …分かる」


「拓は、何でしたかったのかなぁ?

 分かんないけど…。

 えーと?何でだっけ?

 あ、高校が夏休みに入るから、会えなくなるから、寂しい、って。

 オレ、拓が初めてだったんだけど。

 下手くそだっただろうなぁ。

 別に文句は言われなかったけど」


言うわけない。

山桜桃に抱かれて、嬉しくないわけない。


上手いとか、下手とか、分かんないけど

山桜桃と出来たら嬉しいと思う。


琉惺は、山桜桃の服を掴んだ。

「何かザワザワして、落ち着かない。

 このまま眠れない」


「も少ししていいなら、も少し触るよ?」


濡れた目で、琉惺が見上げる。

「触って欲しい…」


山桜桃は、困った。


どこまで?


どこまでしたら、琉惺は、自分の性別の分からなさと闘うことになってしまうの?




自分の、気持ちは体温で伝えてみたいけど…


琉惺の痛いところには、触れないであげたいのに。