#ギイタクif

綺麗




託生が、ガタガタと震えながら自分の肩をきつく抱きしめる。

「どうしようどうしようギイ。

 また汚れた、汚い、僕」


ギイは、託生を毛布でくるんで、その上から抱きしめる。

「大丈夫だよ、託生。託生には何も着いてない。

 心配しないで」


毛布の中から、託生が見上げる。

「ギイ、お願い。上書きして」


ギイは首を傾げた。

「上書き?」


「ギイで、上書き…。

 僕は汚いけど、僕に触れたところ、ギイが後から洗ってアルコール消毒して」


「え、何?

 託生触っていいの?

 …あ、いや、調子に乗ったらいけないな。

 託生、お前、今混乱してるんだよ。

 気持ち悪くて吐くだろ、そんなの」


「ギイには悪いけど、綺麗なギイに触られたら、あの汚い人たちが、少しは薄れるかな、て。

 それに…」


「ん?」


託生が思い出したように眉を寄せる。

「あの時、ああ、こんな人達にやられるなら、一度ギイに抱かれたかったな、って…。

 ごめんね、こんな僕が。

 おこがましいの、分かってるんだけど」


託生の言葉に、ギイの、抑えに抑えていた欲情が、一気に上がる。


でも…

「まだ、触れないだろ?

 そんなんで、どうやってセックスすんの。

 オレ、するからには、ちゃんとしたいよ?」


「そ、だよね。

 そんな、消毒みたいなの、やだよね」


「…じゃなくて。

 オレは、託生を好きで、抱きたいの。

 それともオレがしたら、託生は綺麗になるの?」


託生が、首を振る。

「僕はなれないけど、あの人たちから触られたから、感触が気持ち悪く残ってて。

 それならせめて、ギイに触ってもらった感触を残したい」


ぷつりと、ギイの中で何か切れた音がした。

「…好きな子に触れない、なんて、結構拷問なんだよ?

 オレ、頑張ってたのに…」


託生が、毛布の隙間から、震える手をギイへ伸ばす。

「ギイ、ごめんね、ギイを汚すけど」


「これが、汚すことなら、お前が思う『自分は汚い』と同じだけ、オレを汚したらいい。

 そしたら、オレはお前と同じになれるんだろう?

 独りで苦しまないで、オレも仲間に入れろよ」


ギイのキスが、託生の唇に触れる。

「ごめん。

 乱暴にはしないけど、たくさんしちゃうかもしれない。止められないかもしれない。

 …すごくすごく、ずっとずっと触りたかったから」


アイシテル。


の囁きと、キスと、優しい指と。


後は、もう、分からない。


欲を抑えて抑えて…極限だった託生には、その行為は意識を飛ばさせた。




目が覚めて、覗き込むギイに、託生は手を伸ばす。

「…ギイ、死んじゃわないで」


ギイが見下ろして、微笑む。

「ばっか、こんな嬉しい時に死ねるかよ」


見下ろすギイは、今までと変わらず綺麗で


託生には、不思議だった。


「ギイ…僕に触ったよね?」


「触ったどころか」


ギイの唇が、音を立ててキスする。

「託生の中に入ったよ」


託生は、ぼんやりギイを見上げる。

「ギイ、綺麗」


「だろ?

 託生と一緒になれて、一段と綺麗だろ?」


「おかしいね。

 何で?」


ギイが身体を起こす。

「さぁなぁ。

 神さまのおかげじゃない?」


神さま…


確かにギイの背中からは、朝陽が照らして


ギイの髪を金色に染めて


「ギイ、天使みたい」


天使のギイは、それはそれは綺麗に微笑んだ。