#ギイタクパラレル
両性具有2


「ギイ、お腹空いた」

お腹いっぱいになって、くうくう眠る李音と対照的に、託生は切なそうにギイを見上げる。

ギイは、その顔に笑ってしまう。
「李音に吸われた分、お腹空くよね」

三洲が、階下を指差す。
「大学の学食、美味いぞ」
「ギイ、何か食べたい」
「託生ずっと食欲なかったのに…あ」

ギイが三洲を見る。
三洲は、ギイをチラッと見て、パソコンへ向かった。
「何だよ」
「あ、いや、循環って言ってたから。
 李音が託生からもらう分、託生はお腹が空く。
 託生が食べれるようになる…託生は体力が回復していく、のが循環か?」

三洲は興味ない風情で、パソコンでの作業を続けた。
「さあ?だといいな」
託生が三洲の背中に頭を下げる。
「ありがとう三洲くん。
 ギイ、何か食べて帰りたいー」

甘える託生の口調が可愛い。

三洲は聞こえていたけど、無視した。
…こいつら、祠堂から変わってないんだな、と呆れて。


ギイは久しぶりに、美味しそうに食事する託生を見た。
一緒に食べていた定食の、白身魚のフライを託生から取られた。
デジャヴ。
祠堂でも、こんなシーンあったよな?

託生が笑う。
「これは李音の分」
ギイは苦笑する。
「ハイハイ、さっきのは託生の分だったんだな?」
託生が真面目にうなずく。
「うん」



まだまだ託生の体力は、なかったけど、李音は母乳を気に入って、その度託生は李音を抱いた。

わずか15分そこらの時間だけど、託生はその後疲れて横たわった。

それでも、李音は託生の温もりに嬉しそうに、小さな手でぎゅっと託生を握りしめていた。

それをギイが嬉しそうに眺める。
「託生」
「ん?」
「李音が幸せそうだ」
託生が李音を撫でる。

「うん。僕も」
「キスしていい?」
「ん」
託生が唇を寄せる。
その柔らかさに、ギイはキスをした。

ギイは、託生の頭を撫でる。
「まだ、休んでて」
「うん…」
「ベビーシッターさん来るし」
「うん…」
ギイが、わしわしっと託生の髪を掻き上げて、額にキスする。

「自分でやりたいだろうけど、まだ動いちゃダメ」
託生が残念そうにうなずく。
「うん…」


託生が授乳を始めて、食欲が増して。
胃が元気になったのか、仕事終わり頃に託生からLINEが入る。
『お醤油味の、お煎餅が食べたい』
ギイは苦笑しながら
「はいはい」
LINEを返す。

ハウスキーパーさんも来てくれてるから、頼めばいいのに、あえて託生はギイに甘える。

食べることは、内臓の動きを回復させる。

託生の足取りも少しずつしっかりしてきた。
お腹のキズも傷まなくなった。


「ギイ、お帰り」
玄関を開けたら、李音を抱いた託生が立っていた。
ギイは慌てる。
「託生、歩いて平気?」
「トイレへは歩いてましたよ?」
「まぁそうだけど、李音抱いて…重いのに」
託生が李音の額にちゅっとキスする。
「幸せな重さだよね」
母乳になってから、李音は余計に体重が増えた。

李音が手を伸ばして、きゃきゃ、と笑う。

幸せな、声。

託生が上目遣いにギイを見る。
「他の幸せな重さも、そろそろ欲しいなぁ…」
「?」
何だ?また子供欲しいとか言うなよ?


ベッドで、託生がギイに擦り寄る。
「ねぇ、ギイ…」
伸びてくる託生の手を、ギイは握り返す。

「したいけど、怖いって」
「大丈夫だって、少しずつ、立って、歩いて、李音も抱っこして。
 まだ外は怖いから出てないけど…。 
 ギイとしたい」

ギイは、フーッと細く息を吐く。
「思い知らされた。
 オレはお前を失うのが、一番怖い」
「僕もだよ。
 ギイと李音といられないのが、一番寂しい」
「だから、怖い事したくないって」
「ギイの腕の中にいたい」
「じゃあ、抱きしめててあげるから」
「ヤダ、して」

正直、ホッとしたら、ギイの方も限界で。

触りたくて、温かくなりたくて。

そっと託生の胸に手を乗せた。

託生がその手を見る。
「あ、それは駄目です」
「は?」
「触ると…出ます」

ああそうだった。
「…今はこれは李音の所有物なんだな」
いきなり現実だ。

託生の腕がギイの首に絡む。
耳元で託生が囁く。
「他は全部、ギイのだよ」

久しぶりの託生の身体は、甘くて。

でもしがみ付く力もしっかりして、身体に当たる骨もさほどなくて、ギイはホッとした。

中はキツくて、託生は少し痛がったけど。

「ギイ大好き…李音ありがとう」

温かくギイを誘い込んで、最後はギイの理性を飛ばさせた。