#ギイタクパラレル
託生少女version


タクミの頬に、首すじにキスを降らせる。

途中からギイが怖いことをしないと分かったのか、腕の中のタクミは力を抜いた。
「あ…の」
ギイはキスを止めて微笑み掛ける。
「なに?」
「お名前、なんて呼べば?」
「皆んなはギイって呼ぶよ」
「ぎい?」
「義一、だけどね」
タクミがふわ、と笑った。
「ぎいちさん」
丁寧な呼び方がくすぐったかった。

さて。
「あのさぁ、最後までしてもいいんだけど、何かあった時の為に今日はやめとこうか」
タクミが不安そうな顔になる。

ああ、そうか。
ナオトはセックスする時だけ、タクミを見るんだ。しないのは不安を引き起こすかもしれない。
…でも。

多分ナオトは、タクミと寝ただろ、と詰めよってくるはず。
足下は見られたくない。

ギイは、タクミの唇を指でなぞる。
「それよりオレは、タクミちゃんと付き合いたいなぁ」
タクミの目が迷う。
「ナオトが…何て言うか」
ナオトは、捨てるって言ったんだけどね。
まさかそんなこと言うわけにはゆかない。

ギイは、タクミの髪を撫でた。
「じゃあ、ナオトさんがいいって言ったらいい?」
タクミは寂しそうな顔をする。
「ナオトがいいって言ったら、ボクはナオトに、もう必要ないって事です」

そうなるのかあ?

「じゃ、タクミちゃんは、ナオトさんを好きでいい。オレはタクミちゃんを好きでいい?」
「ボク…」
タクミが顔を逸らす。
「ナオト以外好きになった事ないから、分からない。ナオトのことも、これ好きっていうのか分かんないけど」
タクミが、握っていたギイの腕から手を落とした。
「ナオトとは離れられないけど、好きって、どんなのをいうんだろう…」

タクミの笑う顔を見たいと思うことだよ。
とギイは言いたかったけど、ナオトが全てのタクミに通用するだろうか?

タクミは、ナオトから見捨てられないことに必死だ。
タクミにとって『好き』は、自分を見てくれる事、だろうか。
それが、自分の苦しむ姿でも?

だから、痛がれば痛がるほどタクミを見るナオトから、タクミは離れられない。
両親と同じに、自分に関心がなくなることをタクミは一番恐れている。

ネガティヴでも、自分に関心を持たれたいなんて、悲しい。

「タクミちゃん」
タクミの冷えた目が、ギイを見上げる。
「はい?」
「お願い。オレのことも見てよ」
ギイの優しい眼差しは、タクミを微笑ませる。
「見てます」

見てますよ。

優しいぎいちさん。

でも、ナオトはボクの全てなんです。