#大まお
パラレル
αとβ



世の中は、奇跡と偶然に満ち溢れてる。

何かと能力の高いα。

ほんの一握りの存在。

たまたま舞台が一緒になった先輩。

すっごいなぁ、カッコいいなぁ、と思ってたらαらしい。
ちょっと卓越してるもんね。

世の中のほとんどはβ。

普通である事。

αの大ちゃんは、頬杖をついてため息をつく。

「普通って何よりいいことだよ」

かなぁ。

優秀さは、この業界では財産と思うけど。

なんて言えない。
彼は人並み以上の努力をする人だから。
αだから、なんて言わせない。ストイックなまでに、自分を極限まで追い込む。

それがまた、カッコいいんだよ。

もうね、天は二物を与えずって誰が言ったの?
才能に上塗りされた努力。

でもその天才が秀才的に努力する塊、みたいな大ちゃんが。

誰にも見せない顔で、僕に笑う。

「まーお?
 何見惚れてんだ」

「…見惚れては、いません」

僕は精一杯強がって見せる。

どうやったらこんなカッコいい人に見惚れないでいられるんだよ。

でも対等に好きだからと大ちゃんが言うから、信じたいし、疑いたくない。

何につけ、大ちゃんが上に見えちゃうけど、それは彼の努力の成果。

大ちゃんがαだからって、その上に胡座をかいてたら、能力は埋もれたまま、って言う。
そうなのかな。
αは、何もしなくても、αだな、って一般人から見たら思うんだけどね。

大ちゃんが僕に手を伸ばす。

キレイな手。
キレイな指。

目を上げたらキレイな顔。

視線絡ませて、上手なキス。

落ちるよ。
誰だって。

でも大ちゃんは、僕を好きだと言う。

他の誰でもない、オレが好きなのは、まおだよ、って。

何で?
って。

大ちゃん普通に照れて、まお以上に可愛い子いないよ。って。
二十歳過ぎて、可愛い、もなんですが。
大ちゃんになら、いいか。

でも、所詮αの大ちゃん。
稀にしかいないし、あまり外に出ないけど、Ωに会ったらどうなるの?
意志とは別に、思考持ってかれちゃうよ?
全身全霊で、惹かれちゃうよ?

…って。
都市伝説だけどね。

そんなカップル、見たことない。

普通に気に入って、相手も気に入ってくれて、誰もがそうやって一緒にいる。

…と思うけどね。

分かんない。
僕は一般人だし、Ωがいても分からないだろうし。
大ちゃんがαなのも正直分からないもんね。

「まお、オレといて、何考えてる?」

「大ちゃんの浮気対策について?」

「うわ、何が浮気だよ?
 お前こそ、無意識にその可愛い顔で、人に笑いかけるなよ?バラ撒く公害だ」

「ひど、人を化学汚染物質みたいに」

大ちゃんの腕が、僕を抱き寄せる。

「まおは、何もしてなくても、誘ってるからなぁ」

「ませんー」

大ちゃんの手が、服の隙間から忍び込む。

「ホラ、オレを誘惑してる」

「それは大ちゃんの…」

最後まで言わせてもらえなかった。

大ちゃんのキスと、大ちゃんの重み。

大好き。

願わくば、大ちゃんがΩに出会いませんように。

好きでもないのに、誘惑するなんて犯罪だ。

大ちゃんは、僕のでいさせて。

フェロモンとか使わないで、フェアじゃないでしょ。

大ちゃんいわく、

「オレは、まおのフェロモンにやられたんだな。
 そして今もやられ続けてるんだなぁ」

大ちゃん。
僕にフェロモンなんて、ありません。
その証拠に他に誰も寄って来てないでしょ?




「まおさぁ」

「は?」

「Ω以上にΩだよね」

何ですと?

めっちゃ普通にβの中のβだよ。

大ちゃんがため息をつく。

普通ここでタバコ、って行きたそうなとこ、禁煙中の大ちゃん。

大ちゃんが、うつ伏せになった僕の背中に唇を当てる。

ちょっと…また熱が上がるよ。

まだ、身体の感覚がぼんやりしてるんだから。

大ちゃんの唇が、徐々に下へさがる。

「大ちゃ…ん、だめ」

また、したくなるよ。

大ちゃんの手が脚の間を探る。

大ちゃんに捕まる。

「うあ…」

やめてよ、恥ずかしい。
終わったばっかで、また熱持ってるなんて。

「まお?
 オレには素直になって?」

とか、無駄にいい声で、耳元で囁くし。

…ダメ。

仰向けに転がされた僕は、大ちゃんの頭を掻き抱いた。

もう、頭、何も考えらんない…。

「まお、好き」

言ったな?
Ωに会っても、それ言い続けてよ?

身体の機能が、気持ちに負けないでよ?

まだ出会ったことないΩ。

一体αは、どんなになっちゃうんだろう?

好きは、好きでありますように。

…怖いけど、大ちゃんが僕を忘れてしまいませんように。


神さま、

何でこんなややこしい仕組み

作ったんだよ?


好きは好きで、いさせて。