#オリキャラ
…覚えている方いらっしゃるのかしら。
CAと
パイロットの二人
ゆづと上條さんです。




アメリカが、あるウイルスで、莫大な感染者を出した。

アメリカ。

自分たちには、馴染みの勤務地だ。

馴染みの。

そして今、上條さんはフライトで現地へ向かったばかり。

…こういう場合、どうなるの?



安希が、由蔓の肩を掴んで揺する。

「何カッコ付けてんだよ、
 好きなんだろ?
 心配なんだろ?
 体裁気にしてる場合かよ!」

茫然とモニターを眺める由蔓。

「て、俺、上條さんの家族じゃないし」

「家族よりお前なんだろ?
 上條さんは。
 お前が心配してやらなくてどうすんだよ」

「も…会えない?
 俺、まだ言ってない事いっぱいあるのに。
 してあげてない事いっぱいあるのに」

「由蔓、泣いてる暇あったら会社に連絡しろ。
 今上條さんフライト中なんだろ?
 帰って来れるのか聞けよ」

「帰って…やだ、会えないのやだ」

由蔓が、安希の肩にすがる。

「ねえ、ロックダウンてどのくらいの間?
 都市封鎖だよね?
 アメリカひどいよね、感染者数…」

由蔓が、安希の肩に額を付けて泣き出す。

そんなに好きかよ。

あのハイジャック犯にでも「代わりに人質になります」って、わざわざ申し出る由蔓が。

どんだけ変な客がどんだけ無理難題言って来ても、
にっこり笑顔で、
「申し訳ございませんでした。
 早急に対応致します」
ってホントに対処しちゃう由蔓が。

だからお前は、英会話ブロークンなのに、チーフパーサーなんだよ?

全く接客業には天才だよな。
感心する。
普段は、普通のキレイなにーちゃんのくせに。

キレイなくせに彼女作らないなー、と思ってたらいきなり上司から気に入られて、訳わかんないうちに同居してるし。

訳わかんないうちに、相手に夢中になって…こうして泣いてるし。
おい、あのチーフの時の由蔓はどこだよ?
いつだって冷静な、にこやかな由蔓は。

「安希、安希、俺怖いから会社に聞いて」

「いや、会社、家族にしか教えないし。
 俺たちは、俺たちがどうすればいいかしか、教えてもらえないし」

由蔓の涙の目が、安希を見上げる。

泣いててもキレイだな、コイツは。

「か、みじょさんは?
 戻って来れない?」

…一番感染者数の多いアメリカに降り立った飛行機は、帰してもらえるのだろうか。

「由蔓、上條さんのフライト先は今回どこ?」

「アメリカ」

んなこと分かってるわ。

あーもう由蔓ってパニクるといきなりバカ。

ウチは、アメリカンエアラインだよ。
アメリカに行かなくてどこ行くよ?

「都市は?」

ニューヨークじゃない事を祈る。

「えと、いつものDallas」

ダラス。

可能性ありだな。

降りて現地へ出歩いて無ければ、接触はして無い。
乗せたのは、日本在住の人たちだ。
濃厚接触者には当たらないかもしれない。

「…由蔓、会社に聞け」

「俺のことは、何て」

「由蔓は上條さんの何なんだよ?」

由蔓がうつむく。

「分かんない。
 でも、俺はあの人が好き」

「彼女です、くらいじゃ教えてもらえないぞ」

「家族のフリは出来ない」

「面倒だな。
 嫁ですって言え」

由蔓が、驚いて安希を見る。

「嫁、はちょっと」

「じゃ、旦那って言っとけ」

「いや、もっと無理」

「あーもう、婚約者って言っとけ」

「……」

安希が、由蔓を覗き込む。

「一生一緒にいたいんだろ?」

由蔓がうなずく。

ゲイでも無いくせに、何でそこまで上條さんに執着するかね。

…どこまでしてんだろ。
つい、由蔓のキレイな横顔を眺めて安希は思った。
キスくらいしてそう。
この二人。

由蔓は、のろのろと携帯を手に握った。

「電話してみる」



いきなりあの、いつものパーサーの時の由蔓の顔になってる。

「はい、そうです。
 昨日フライトの352便Dallas行き。
 スタッフは現地で待機ですか?
 日本へ帰国予定は?」

『家族の方ですか?
 守秘義務で家族外にはお教え出来かねます』

「妻です。
 最近入籍したので、まだ会社へ報告が行ってないかもしれませんが。
 保健の扶養にも入ってませんし。
 私も自分の社会保健を持ってますので」

『確認致します。
 お名前をどうぞ』

「那珂冨由蔓、でまだ登録されていると思います。住所変更はしているので、上條と同住所になっていると思いますが。
 同じ会社です。
 検索掛けて下さい」

『承知致しました。
 はい、確かに那珂冨由蔓様、御同居されておられますね。
 口外は禁止されておりますので、ご了承下さい』

由蔓は息を飲んだ。

「はい」

『352便Dallas行きの機は、現地からの影響を考慮の上、機の点検と整備、燃料の補給を行い、準備が整い次第日本へ帰国の途に着いております。
 恐らく帰国は、日本時間の明後日昼から夕方にかけてになるかと存じます』

アメリカの地にスタッフは降り立っていない。

それは機内で過ごしたという事で、アテンダントは帰りの仕事がほぼないけど、機長はまた操縦だ。
かと言って現地の操縦士を乗せるのは、感染の可能性がある。

上條さんと、副操縦士が折り返し運転か。

しんどいだろうな。

でも…帰って来る。
帰って来れる。

会える。

『念の為、帰国されても二週間は空港近くのホテルに待機して頂きます。
 健康の確認を終えた後、ご自宅には戻られます』

会えるならいい。

見通しがあるならいい。

「上條さん…」

『以上です。
 ご不明な点はございますか』

「いえ、ありがとうございました」

隣で、成り行きを見守っていた安希が由蔓を覗き込む。

「由蔓?」

由蔓の目が、安希へ向く。

「上條さん、帰って来てる。
 もちろんすぐには会えないけど、
 …大丈夫」
 
安希が笑う。

「良かったな」

由蔓は素直にうなずいた。

安希はこの二人は何なんだろう、と思いはしたけど、由蔓にこんな顔をさせるなら、上條さんは由蔓を大事にしているのだろう。

由蔓、そんなに好きか?



上條は二週間ホテルに缶詰めにされたが、検査で陰性だったので、家へ帰された。

由蔓を見て、
「ただいま。
 遅くなってごめん」
笑って。

抱きつく由蔓を抱きしめ返した。

由蔓の髪に、唇を埋める。

「ゆづ…」

「良かった…戻って来れて」

「ギリギリな。
 ゆづキスさせて」

上條の唇が、唇に触れる。

由蔓は目を閉じた。

「まだ、上手にキスも出来てないのに」

「ん?」

「まだ、たくさん好きって言ってないのに」

「由蔓?」

「まだ、気持ち良くさせてあげられてないし、
 まだ、上手くsexの相手にもなってない」

「おいおいおい由蔓」

由蔓が、上條の首にしがみつく。

「とにかく、まだ、まだ一緒にいるの、足りてない…」

上條が、由蔓の髪を撫でた。

「うん、由蔓」

綺麗な由蔓の唇に口付ける。

抱きしめる。

離れていた分、いつもより深くなる。



「お前、よく現地の情報聞けたな」

上條の胸にくっ付いて、うとうとしながら由蔓は重い口を動かす。

「んー、家族でないと教えられません、て言うから、妻です、っと言ってやった」

上條が驚く。

「は?それで通ったわけ?」

「住所が一緒だったから、
 御同居の奥様ですね、って」

上條は、額に手を当てる。

「度胸あるなー、お前」

眠りに落ちそうな由蔓は舌足らずだ。

「だって、心配だったんだ、もん…」

あとは寝息になる。



由蔓、オレもね、思った。

もしもこれでウイルスが収束するまで会えなくなるなら、

お前をこんな状態で日本に置いておくなんて。

いっそ、始めてなければ良かったって。

長く見通しの立たない、離れ離れなら

お前に好きだとか言わなければ、お前を苦しめずに済んだのに、って。

何も知らずに、北本安希と仲良く過ごせてたかも、なんて。

後悔したよ。

お前を苦しめるくらいなら、愛してるなんて言わなきゃ良かった、って。

お前を縛ることになってしまったって。

後悔が、叫んでたよ。


また、こうして抱きしめられて、良かった。

お前に帰って来れて

良かった。

ずっと後悔し通しだったよ。






言わずと知れた
『リフレインが叫んでる』
歌詞確認をして、
は?
「どうして」
は二人で語っていたのね。
確かに
僕と私が出て来る。

私は別れるなら
もっとしてあげたかった事が
あったのに
の後悔。
僕は別れるなら
こんなに苦しむなら
出逢わなければ良かったのに
の後悔。

さすがのユーミン。
東京ラブストーリーも
この曲から生まれたのよね。

2サイドからの想いが
どちらも綺麗で
由蔓と上條さんも
会いたいけど会えない
でも考えてる事は
違うんだろうなって。

昨日頭が動かない中
話一本もupしてないーと
ブロ友様に話してたら
ゆづはー?
って。
ホントだよ!
あーいう職業大打撃よね
と、やっと頭が動いたのでした。

大ちゃんまおくんでも
ギイタクでもなくて
オリキャラですが。
その分心置きなく
やりたいほーだいが醍醐味

ゆづとか知らない方
すみません💧
私オリキャラからブログ始めたもので。

書いてるうちに
『青春のリグレット』が浮かんで
タイトルがごちゃ混ぜに。

見て下さった方
ありがとうございました😊