#BLオリキャラ
羅奈と朔也が
出会った頃





雨が激しくなった。

次第に雷を伴う。

朔也は、窓の外を見た。

「稲光だ」

羅奈が、朔也と同じ方向を見る。

「どの辺に見えました?」

朔也が、怪訝そうに、羅奈を覗き込む。

「雷、怖くない?」

羅奈が窓の外から、朔也へ視線を戻した。

「え?怖くないですよ。
 女の子じゃないんだし。
 光、キレイですよね」

朔也が、なーんだ、とガッカリしている。

「えー、何か怖いものないの?」

羅奈は、顎に指を当てた。

「…怖い?
 ああ、人が怖いですかね」

人。

「俺も、怖い?」

羅奈が、ハッとした。

「あ、ああ、そういうんじゃ無くて、
 えと…」

でも、今一番怖いのは、朔也だ。

失くしたらどうしよう。

会えなくなったら、どうしよう。

嫌われたら、どうしよう。

失いたくない。

怖い。

想いが頭を渦巻く。

朔也が、羅奈へ手を伸ばす。

羅奈は、わずかに体を引いて、朔也を見上げる。

「あの、一条さん」

触らないで。

「俺から襲われるのが怖い?」

「…一条さん、そんなことしません」

朔也は、伸ばした手を下ろした。

しないな。

壊したくない。

せっかく、怖がりながらも、こうして近くにいるのに。

それだけの間柄でも、壊したくなかった。

「だな」

羅奈が、明らかにホッとする。

朔也は、密かに傷付いた。

何もされたくない、か。

まぁね。

嫌われてるわけじゃないんだし、傷付くことないんだけどね。

でも、抱きしめられたいと、思って欲しい。

抱きしめたい。

ぎゅっと、体温を、想いを、胸の中で伝えられたらいいのに。

朔也は、下ろした手を握りしめた。

「泊まってけ。
 お前、雨の日の夜は運転しない方がいいだろ」

羅奈は、そんなに視力は悪くないが、片方だけ乱視が入っている。

水に光が乱射するのだ。

見えにくい。

暗い中の運転は危ない。

一方、羅奈は、固まっていた。

『泊まってけ』

ですか。

これ、女の子だったら、yesはOKの意味だよね。

違うよね。

でも、帰りたくない。

一緒、いたい。

同じ空間で、眠りたい。

いいな。それ。

羅奈は、目を伏せた。

「はい。
 お邪魔します」

朔也が、意外そうな顔をして、次の瞬間、なんともいえない表情で微笑んだ。




ちゃんと、ベッドとソファベッドと、分けてくれて、朔也は羅奈の頭を撫でて、

「おやすみ」

と、優しい顔で笑った。

…嬉しかった。

好きな人の家に、泊まる。

初恋の女の子みたいだ。

嬉しい。

好きな人の近くにいる。

羅奈は、ブランケットで顔を半分隠した。

思わずこぼれる笑みを隠す為。



ねぇ、

こんな風に春風が通り過ぎ雨が降り

やがて夏が過ぎ秋が来て

季節が巡る

貴方がいてくれたから

心に花が咲いた



ねぇ

ありがとうごめんね

おやすみなさい


song by
clear
『ねぇ。』