#BLオリキャラ
羅奈と朔也の
出会いの頃



ねぇ、青空に、お月さまだよ?

昨日の夕方の空。
ねぇ、今日は優しい雨降り。

刺す冷たさの無い。

温かな、雨。

雨音は好き。

優しい、繰り返す、

一条さんの声のよう。

「大丈夫、大丈夫だから、
 一緒にいよう?」

何度も何度も繰り返された言葉。

「おいで、
 一緒にいよう?」

魔法の言葉。



二人の間に何の間柄も作らず、一条さんがくれた居場所。

一緒にいよう?

知り合いか、

友達か、

何のくくりもなく。

でも一緒にいていい保証。

「羅奈、一緒にいて?」

「俺ひとり嫌いだから、いて?」

まるで自分が寂しがりみたいに、俺にお願いしてみせる。

俺に決定権を持たせない。

一条さんの親切。

ありがとう。

「一緒にいたい」

言えない俺の為に、一条さんの優しさ。

一緒にいたいよ、

好きだよ、

言いたいけど、

言ったら自分を許せなくなる俺へ。

一条さんの気遣い。

貴方一人に、責任負わせて、ごめんね。

いつか、この分返せる時が来たら返すから。

俺が、一条さんを好きなんだよ。

俺が、一条さんと一緒にいたいんだよ。

いつか、抱きしめて、貴方が大切だと、必要だと、伝えたい。

ねぇ、

待っていてくれる?

それまで。

それまで一緒にいて、って言い続けてくれる?

お願い。

いつか、たくさん返すから。

…大好きだよ。



ふと目を移すと、一条さんが視線に気付いて、羅奈を見る。

手にしてたタブレットを閉じて。

「羅ー奈ぁ、ティータイム。
 コーヒー淹れてー?」

自称、面倒くさがりの一条さん。

コーヒーメーカーはあれど、コーヒーは淹れない。

羅奈は、立ち上がる。

「お茶受け、何か買って来ます?」

聞いてはみたものの、一条さんは甘いものを好まない。

「んや、コーヒーが飲みたい」

「はーいー」

ティファールでお湯を沸かして、フィルターにお湯を落とす。

一条さんがキッチンへ来た。

「いい香りー」

羅奈は朔也を見上げる。

…羅奈が小さいというより、朔也が背が高いのだ。178はあるだろう。いいなぁ。

高い背に比例して、長い腕。

あの腕に抱きしめられたら心地良いだろうなぁ、なんて想像して、羅奈は慌てて頭を振る。

いけない、いけない。

「何、羅奈、何か食べたい?」

「チョコレート」

朔也が、上着を手にする。

「車出そうか?」

一条さんの車。

黒に金のロゴのVEZEL。

「はい」

なんて

ちょっとコンビニ行ったりして。

そんな、一緒の普通な時間。

くれてありがとう。

一条さん。

あの、

また、来て

…いいですか?