#ギイタク
あなたが出て行った
翌日の空は
晴天
やっと捕まえたギイは、まだ拗ねていた。
怒って、というには寂しそうで、やっぱり拗ねてるんだと思う。
怒られているなら、怖いけど、拗ねてるなら、ご機嫌とるのは僕でありたい。
それをするのは恋人枠なので。
ベッドの壁に力無くもたれて、だるそうにギイが口を開く。
「託生、『高校生なんだから、まだ分かんないし』とか思ってるだろ」
「先は分かんないけど。
でも分かんないからって、あきらめてはないよ。
僕は何がなんでもギイといるから。
それがギイの言う結婚ではないかもしれないけど」
うつむいているからギイの顔は分からない。
でも、夜部屋を出て行ったギイも、決して平気ではなかったと思う。
僕が『結婚なんてしないよ』=『そんなに先までギイとのこと考えてない』と言ったと思って出て行ったのだから。
表情は見えないけど、ギイの肩は泣きそうに心細気だった。
「結婚じゃ駄目なの」
ぽつ、とギイがつぶやく。
抱き寄せたら振りほどかれるかな、と僕は思ったけど、そっと手を伸ばしてみた。
「僕は一緒にいられたらいい。
周りに祝福してもらえるとは思ってない」
伸ばした手にギイは頬を擦り寄せる。
「…託生は認めてもらう自信ないの」
僕はほっとして、ギイを抱きしめた。
「周りに対しては、認めてもらえると思ってないけど。
でもギイが好きになってくれた僕だから、ギイの傍にいてもいいとは思ってる。
というか、いくら周りが決めても、ギイの側にいるのはギイが決めた人じゃなきゃいけないと思うんだ」
ギイは上に立つ人になるだろう。
人を率いる人は、信頼もされるけど、人に頼れない分孤独だ。
いて欲しい人に側にいてもらうべきだと思う。
ギイは僕の腕を抱きしめる。
「オレは託生がいいよ」
僕はギイの髪に口付けた。
微かにコロンの香り。
「うん。僕はギイの気持ちが尊重されないのは嫌だし、せっかくギイが好きになってくれたんだから、どうしてでも傍にいたい」
「ずっといる?」
「いるよ。
簡単なことじゃないだろうから、戦うよ」
「…ありがとう。
託生が結婚してくれないなら、なんかあっけなくこの関係も終わっちゃうんだなぁ、って寂しくて」
「お互いしんどいことになるだろうけど、でもずっと僕は側にいる」
ギイは顔を上げて、ちゅっとキスした。
「うん。託生は不安じゃないの?
オレは不安だよ。託生にいつ愛想尽かされるかな、って。だから、縛り付けたいんだよ。結婚とかそういう社会的枠組みで」
「ギイから嫌われても、僕はギイを好きだから。
それは何があっても変わんないと思う」
「嫌うわけない」
「うん。そうだね。
ギイも僕を嫌いになったりしないね」
ギイが僕の腰を抱く。
「託生の中は温かいから」
「ん?え?」
中?て、何、どこ。
ギイは僕の胸に顔を擦り寄せた。
「託生の胸の中は温かいんだよ。安心する」
ああ、そこね。
びっくりするじゃないか。
いきなり変な想像したよ?
紛らしいな、ギイ…。
こっそり心の中であたふたしてたら、ギイになんとなく気付かれた。
「たーくみ?何かオレに都合のいい妄想してない?」
「え?ないよ?何も」
ギイの手がするりと服の隙間から忍んでくる。
「そう?聞いてみようかなぁ。
託生の中に」
…っ、気付いてんじゃん!
「今、そんな話じゃ」
「ない?そう?」
ギイの唇が、服の隙間から覗く肌に口付ける。
思わず身体がビクッとして…
ギイの目が意地悪く笑った。
「ねぇ、ホント違う?」
「違かった、けど、違わなくなった、かも」
「いや?」
「じゃない。よ」
昨日出て行かれて、不安で、体温で安心したい僕がいる。
「しよ。ギイ」
ギイは嬉しそうに、僕の肩を押してベッドに倒した。
仲直り
しようね?